最終更新:2024/08/22
化粧品の「ヒト幹細胞培養液」とは?薬機法から解説

「ヒト幹細胞培養液」を配合した化粧品や健康食品の広告では、「ヒト幹細胞培養液」は表現可能でしょうか。
「ヒト幹細胞培養液」とは、ヒト幹細胞を培養する時に出た培養液です。細胞を活性化させ、肌の再生を促す成分です。
この記事では、「ヒト幹細胞培養液」を広告で表現する際の注意点や、「ヒト幹細胞培養液」の効果と広告表現について解説していきます。
薬機法違反になる表現の例や言い換え表現の例も合わせて紹介していくので、広告作りの参考にしてみてください。
「ヒト幹細胞培養液」とは
ヒト幹細胞培養液について解説するために、まずは幹細胞について説明していきます。
幹細胞とは、以下の2つの能力を合わせ持つ細胞です。
・身体の中のさまざまな細胞を作り出す能力(分化能)
・自分と全く同じ能力を持つ細胞に分裂する能力(自己複製能)
幹細胞は簡単に言えば、身体の細胞を活性化させ、組織の再生を促してくれる細胞です。細胞で病気や怪我を治す「再生医療」という治療法で用いられています。
幹細胞の種類は、大きく分けて3種類。
・ヒト幹細胞
・植物幹細胞
・動物幹細胞
幹細胞の中でも、人の細胞から作り出された「ヒト幹細胞」は、安全性が高いことから美容・医療分野で多く用いられています。
人の皮下脂肪から採取した「ヒト幹細胞」を培養する時に抽出した上澄みの液が「ヒト幹細胞培養液」です。そのヒト幹細胞培養液を材料として使用したコスメを「ヒト幹細胞コスメ」と言います。
細胞を活性化させたり再生を促したりする細胞の「培養液」を配合しているものであり、ヒト幹細胞そのものが入っている訳ではないということに注意が必要です。
「ヒト幹細胞培養液」は、細胞を活性化させ、組織を再生する成分が含まれています。
培養液が含まれたヒト幹細胞コスメは、肌の線維芽細胞に働きかけ、皮膚組織の主要構成成分であるヒアルロン酸、コラーゲン、エラスチンを作る力を高めます。ヒト幹細胞培養液に期待できる効果は、皮膚の張りと弾力性をあげる効果です。肌のターンオーバーが促されることで、皮膚が再生し、肌悩みが無くなります。
「ヒト幹細胞培養液」の効果
・肌にハリが出る
・肌が潤う
・肌のキメが整う
さらに発毛効果もあるので、シャンプーなどに使われることも多いです。
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ヒト幹細胞培養液は薬機法違反?
広告に「ヒト幹細胞培養液」という言葉が入っていることは、薬機法違反にはなりません。よって、広告上で「ヒト幹細胞培養液」と表現することができます。「ヒト幹細胞エキス」も同様の表現なので、表現可能です。
ただし、広告で「ヒト幹細胞培養液」と表現する際には、気をつけなければいけないポイントが2つあります。
・「幹細胞」と「幹細胞培養液」は別のものだと分かるように表現する
・肌細胞に対する直接的な効果を謳うことはNG
ポイントを1つずつ詳しく紹介していきましょう。
「幹細胞」と「幹細胞培養液」は別のものだと分かるように表現する
「ヒト幹細胞培養液」が含まれた製品の広告では、消費者が「この製品にはヒト幹細胞自体が入っている」と勘違いしないように表現しなくてはいけません。細胞や細胞加工物については、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」で次のように定められています。
定義) 第二条 3 この法律において「細胞」とは、細胞加工物の原材料となる人又は動物の細胞をいう。
4 この法律において「細胞加工物」とは、人又は動物の細胞に培養その他の加工を施したものをいい、「特定細胞加工物」とは、再生医療等に用いられる細胞加工物のうち再生医療等製品であるもの以外のものをいい、細胞加工物について「製造」とは、人又は動物の細胞に培養その他の加工を施すことをいい、「細胞培養加工施設」とは、特定細胞加工物の製造をする施設をいう
ヒト幹細胞培養液は、細胞や細胞加工物とは別のもので、成分として扱われます。
「幹細胞抽出液」「幹細胞エキス」などの表現を使う際も同様に、幹細胞自体ではなく、成分だとわかるように表現する必要があります。
肌細胞に対する直接的な効果を謳うことはNG
健康食品の広告で「ヒト幹細胞培養液」を表現する際は、肌細胞に対する効果について謳うことはできません。
健康食品は医薬品ではないので、効果効能について表現すると薬機法違反になります。
化粧品の広告の場合は、薬機法で認められた効果の表現が可能です。
「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」の「化粧品の効能効果の表現について」では、効果として使える56の表現が定められています。
(1)頭皮、毛髪を清浄にする。
(2)香りにより毛髪、頭皮の不快臭 を抑える。
(3)頭皮、毛髪をすこやかに保つ。
(4)毛髪にはり、こしを与える。
(5)頭皮、毛髪にうるおいを与える。
(6)頭皮、毛髪のうるおいを保つ。
(7)毛髪をしなやかにする。
(8)クシどおりをよくする。
(9)毛髪のつやを保つ。
(10)毛髪につやを与える。
(11)フケ、カユミがとれる。
(12)フケ、カユミを抑える。
(13)毛髪の水分、油分を補い保つ。
(14)裂毛、切毛、枝毛を防ぐ。
(15)髪型を整え、保持する。
(16)毛髪の帯電を防止する。
(17)(汚れをおとすことにより)皮膚 を清浄にする。
(18)(洗浄により)ニキビ、アセモを 防ぐ(洗顔料)。
(19)肌を整える。
(20)肌のキメを整える。
(21)皮膚をすこやかに保つ。
(22)肌荒れを防ぐ。
(23)肌をひきしめる。
(24)皮膚にうるおいを与える。
(25)皮膚の水分、油分を補い保つ。
(26)皮膚の柔軟性を保つ。
(27)皮膚を保護する。
(28)皮膚の乾燥を防ぐ。
(29)肌を柔らげる。
(30)肌にはりを与える。
(31)肌にツヤを与える。
(32)肌を滑らかにする。
(33)ひげを剃りやすくする。
(34)ひげそり後の肌を整える。
(35)あせもを防ぐ(打粉)。
(36)日やけを防ぐ。
(37)日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ。
(38)芳香を与える。
(39)爪を保護する。
(40)爪をすこやかに保つ。
(41)爪にうるおいを与える。
(42)口唇の荒れを防ぐ。
(43)口唇のキメを整える。
(44)口唇にうるおいを与える。
(45)口唇をすこやかにする。
(46)口唇を保護する。口唇の乾燥を防ぐ。
(47)口唇の乾燥によるカサツキを防ぐ。
(48)口唇を滑らかにする。
(49)ムシ歯を防ぐ(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(50)歯を白くする(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(51)歯垢を除去する(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(52)口中を浄化する(歯みがき類)。
(53)口臭を防ぐ(歯みがき類)。
(54)歯のやにを取る(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(55)歯石の沈着を防ぐ(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(56)乾燥による小ジワを目立たなくする。
決められた表現の中に無い、肌を活性化させる・肌の再生を促す・アンチエイジングなどの効果を謳うことはできません。
薬機法で認められているエイジングケアや、肌のハリ、うるおいに関する効果効能の表現に留めておきましょう。
化粧品での違反例
ヒト幹細胞培養液ではなく、ヒト幹細胞が入っていると読み取れる表現は使用できません。
- ヒト幹細胞が入っています
- 肌を活性化させます
- 肌のターンオーバーを促します
- アンチエイジング効果
言い換え表現(参考)
- ヒト幹細胞エキスが配合されています
- ハリのある肌に
- 肌のキメを整えます
- うるおいを与え若々しい印象を
健康食品での違反例
ヒト幹細胞培養液ではなく、ヒト幹細胞が入っていると読み取れる表現はできません。
健康食品で医薬品的な効果を謳うことは、薬機法違反となるので、効果効能に関する表現は不可です。肌など、身体の特定部位を示す言葉も使用できません。
- ヒト幹細胞でアンチエイジング
- ハリのある肌に
- 肌のキメを整えます
- うるおいを与えます
言い換え表現(参考)
- ヒト幹細胞エキス配合
- ハリのある毎日を
- 体の中から美しく
- 体の内側からみずみずしい毎日をサポート
美容機器、雑貨での違反例
医療機器に含まれない家庭用の美顔器などの美容機器は、医療機器的な効果効能の表現を広告で使用することは認められていません。ヒト幹細胞培養液ではなく、幹細胞が入っていると誤解される表現は使用不可です。身体の特定部位を表す表現や、身体の変化に対する表現も使うことはできません。
- ヒト幹細胞でアンチエイジング
- ハリのある肌に
- 肌のキメを整えます
- うるおいを与えます
言い換え表現(参考)
- ヒト幹細胞培養液が配合されています
- ハリのある毎日を
- 若々しく
- みずみずしい
まとめ
ヒト幹細胞培養液を配合した製品では、「幹細胞」と「幹細胞培養液」は別のものだと分かるように表現することが重要です。
化粧品の広告に関しては、薬機法で認められている56の効果が表現できます。ただし、肌の再生を促す・肌を活性化させる・アンチエイジングなどの表現は認められていません。
健康食品や美容機器・雑貨の広告に関しては、医薬品的や医療機器的な効果効能を表すと、薬機法違反になります。身体の特定部位を表す表現や、身体の変化に対する表現も使うことはできません。
ヒト幹細胞培養液は、再生医療で用いられ、美容でも高い効果が得られると話題の成分です。しかし、広告で表現する場合には、効果をそのまま伝えることはできません。
効果の表現として使用できるのは、法律で認められている効果の表現のみです。ヒト幹細胞培養液の効果をそのまま表現するのではなく、言い換えて伝えなくてはならないので注意しましょう。
※違反事例、言い換え表現についてはあくまで参考として捉えてください。表現の違反等の判断については最新の情報を常にアップデートして頂くことが大切です。また、各都道府県の薬務課によって見解が異なりますので、ご理解頂きますよう宜しくお願い致します。
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