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最終更新:2024/08/08

化粧品・健康食品の包装に使われるプラスチック

化粧品・健康食品の包装に使われるプラスチックの添加剤

プラスチック包装は炭素、水素、酸素、窒素で構成されたポリマーで作られています。 プラスチックはいわば、ナマモノのようなものであり経時とともに劣化する物質です。 金属であれば酸化によるサビがあり、唯一経時劣化を受けない容器はガラスくらいではないでしょうか。

本記事では、容器包装に使われるプラスチックに添加される化合物の目的とキャラクター、および必ず留意してほしい特性について解説します。

プラスチックの劣化が引き起こす害悪

プラスチックが容器包装の形状になる前の姿はペレットと呼ばれる米のような粒です。 プラスチックの種類によって異なりますが、この粒を160℃以上の高温で溶かしスクリューで押し出して射出成形、フィルム状にします。 この時、プラスチックには熱とスクリューによるせん断のストレスが加わります。 プラスチックがスクリューで押し出される際、微量の酸素に触れています。 熱と酸素のアタックを受けると、プラスチックの反応点(フリーラジカル)と酸素が結合したパーオキシラジカルが、一連の連鎖反応、自動酸化反応を引き起こします。 これを止めなければ、異物(フィッシュアイ)や融けていないような外観不良、コゲが発生し、容器包装として使用できなくなります。

この異物は人体に影響はなく、使用しても違法でもなく、つまり外観にこだわる日本の過剰なまでの包装品質により不良品として毎年大量に廃棄されてしまうのです。 それを燃やした時に発生する二酸化炭素量は膨大な量であり、皮肉にも3Rを意識して努力しているにもかかわらず、まさに容器包装の闇というべきでしょう(消費者にはわからない微細な印刷不良も含まれます) よって、酸化劣化を止めることは二酸化炭素発生防止にもつながることであり、結果として環境負荷低減に寄与することになります。

プラスチックに添加されている劣化防止・安定剤の種類

  • ラジカル連鎖防止剤(一次酸化防止剤):ヒンダートフェノール系酸化防止剤 連鎖反応の引き金になるパーオキシラジカルを補足する
  • 過酸化物分解材(二次酸化防止剤):リン系酸化防止剤 パーオキサイドを分解、ラジカルと反応して安定させる
  • 熱安定剤:脂肪酸塩(ステアリン酸カルシウム等) 活性分解物の補足や金属府活性剤(プラスチックを製造するときの触媒残差を失活させる) 大まかに加工助剤として3成分を挙げましたが、酸化防止剤のフェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤の2成分はセットで添加することで効果的に機能を発揮します。今は新たな酸化防止剤が開発され、1成分で2成分の効果を発揮する酸化防止剤が添加されています。

酸化防止剤の弊害

酸化防止剤はプラスチック製品の品質向上に必須な添加剤ですが弊害もあります。 もっとも厄介な現象は変色です。 酸化防止剤同士が二量体(成分が2つ結合する状態)になったとき黄変します。 暗い所で保存しておくと促進され明るいところに持ち出すと元に戻る現象もあります。 急速な現象としてはエンジンからの排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)との反応による黄変があり、 その他、健康食品でありがちな事例として多種金属塩が含まれる天然塩と酸化防止剤が錯体を作り黄変やピンク変を起こします。

その他の添加剤

  • 滑剤(スリップ剤) プラスチックはそのままですと滑りにくく、充填時のハンドリングに支障をきたすことがあります。そのため滑剤(スリップ剤)を添加します。 成分は脂肪酸アミドで一般的にエルカ酸アミドが使用されます。
  • 滑剤の弊害 滑剤の挙動はいまだ明確になっていない点もありますが、プラスチックの表面に現れて(ブリードアウトと呼びます)極微小な結晶を作り、滑りを発現します。 しかし、適切な量を添加したにもかかわらず時としてブリードアウトし過ぎて、白い粉をとして析出し異物となる場合があります。現象として、高温多湿の時に発生しやすいといわれています。 味覚への影響もあり、健康食品で水のような無味無臭な製品はないと思いますが、甘みを呈します。
  • アンチブロッキング剤(AB剤) プラスチック同士重ねると密着してはがれなくなることがあります。 滑剤同様、充填時のハンドリングを改善する添加剤で大きさは直径3から10μm、 表面に凹凸を作り密着を防ぎます。ゼオライトやシリカが使用されます。
  • AB剤の弊害 無機物で硬いため、こすり合わせると表面に細かな傷がつきます。 脱落することはありませんが、稀に凝集して異物のように見えることがあります。

避けられないブリードアウト

プラスチックはこれまで挙げてきた添加剤のブリードアウトのほかに、プラスチック由来成分がブリードアウトします。プラスチックはミクロで見るとヒモのようなもので、理想は分子量の大きい長いチェーンであるべきですが、均一ではなくチェーンの短い低分子量(オリゴマー)や未反応モノマーが存在し、ブリードアウトします。例えば、ポリエチレンをヘキサンでほんの少し洗い、溶液をガスクロマトグラフィーで分析すると、規則正しく炭素数が増えていく魚の骨のようなチャートが容易に得られます。 プラスチックすべてで起こっているブリードアウトは避けられない現象です。

問題は化粧品や健康食品の成分と添加剤が反応し組成変化を起こすか否かです。 添加されている量はPPMオーダーですが、製品を構成する成分と全く反応しないとは明言できません。

従来の添加剤に対する規制

法的なプラスチックの衛生に関する規制は現在、改定が進められています。 それまで、日本の規制は昭和34年厚生省告示第370号の「食品添加物等の規格基準第三器具および容器包装の溶出試験」の規格内であればよいという緩い規制でした。

内容は、カドミウム、鉛、重金属の有無、過マンガン酸カリウム消費量、ヘプタン、20%エタノール、水、4%酢酸浸漬後の蒸発残留物で、添加物の成分については扱っていません。 また、欧米のFDAのようなポジティブリスト(PL)による規制ではなく、ネガティブリスト(NL)制度であり、原則として全てのものを認める中で、「禁止するもの」をリスト化するという仕組みで、有害性を把握している物質は規制できるが、有害性を把握していないものは流出してしまうという欠点がありました。 そこで業界で自主基準を設け、例えばポリオレフィンであれば「ポリオレフィン衛生協議会」が作るポジティブリストで規制してきました。

これからの規制

2020年4月28日から改正欲品衛生法に基づくポジティブリスト(国PLと呼ばれています)が交付され6月1日から施行されています。 これにより、安全が確認されている物質のみ使用を認める制度となり、容器包装に使用されている材料がPLに適合しているかユーザーに伝える義務が定められました。 この義務は今すぐにではなく、経過措置を2025年5月31日まで設け、内容として施行前に製造されていた容器包装については従来の規制範囲内で使用されていたことが確認できればPL適合とみなしますという措置です。 ユーザーから国PLについての証明書を求められたときは、「食品衛生法に関する自己宣言書」という形で従来の規格に適合していたことを記載提出すればよいことになります。

このPL法について、各素材ごと頻繁に更新されているので、厚生労働省の「食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度について」を熟読し、公開されている改正案検討の議事録に目を通して、難しい内容ですが理解を深めることをお勧めいたします。

プラスチックはガラスや金属のように添加剤なしでは長期間物性を維持できない物質です。溶出・ブリードアウトは常に起こっている現象であることを理解することが重要です。 ただし、プラスチックの歴史も60年以上経過しそこで得られたノウハウから問題にならないよう改良を重ね現在に至っています。 添加剤が問題になるような成分を包装しなければならない場合は、無添加のポリエチレンも存在します(身近なものでは牛乳に使用されています) 添加剤によるトラブルは経時で起こることが多いため、もし製品との相性に懸念があるようでしたらメーカーに相談し、事前に試験されることをお勧めします。

この記事を書いた人
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株式会社Cogane studio

Beaker media 編集部

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