最終更新:2024/08/08
化粧品・健康食品に求められる包装の機能
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化粧品、健康食品の容器、包装用に用いられる主な素材のキャラクターと、求められる機能、起こりうる現象について説明しています。
化粧品、健康食品製造に求められる包装の機能
化粧品、健康食品ともに成分の表示が義務化され、多成分の混合物であるのがわかるようになりました。保湿剤ひとつにしてもワックス、脂肪酸などの油性成分、水、アルコール、グリセリンなどの水性成分、界面活性剤、無機金属塩のほか、有効成分として様々な化学物質、香料、着色剤、防腐剤で構成されています。 これら成分を製造直後からの組成変化をいかに低減させるかが、容器包装の重要な役目になります。 主な組成変化が起こる要因として、分離を除き、
- 蒸発:水などが蒸発することによる粘度上昇、固化等
- 揮発:香料成分などが揮発し香りが薄れる。香りが変わる。
- 酸化:酸化物の生成。成分効果の低下
- 分解:加水分解などによる成分変化と効果の低下
- 変色:黄変、褐変など見た目の悪化
- 腐敗:生物的腐敗
が挙げられます。
このような現象を低減させるために、外部からの影響をブロックする機能が求められます。 包装容器に必要とされる主な機能と挙げます。(カッコ内は最も優れている値)
- ガスバリア性:酸素の流入遮断 (金属、ガラス 酸素透過量0ml/m2~)
- 水蒸気バリア性:容器内の湿度安定 (金属、ガラス 水蒸気透過量 0g/m2~)
- 遮光、UVカット:光反応の防止 (金属 全光線透過0%)
- 帯電防止:粉体が静電気で容器内面に付着するのを防止 (金属 表面抵抗値0Ω)
組成変化に対して容器包装が担う重要な機能はガス(酸素・水蒸気)バリアと遮光です。 よって、もっとも容器として適した素材は金属(アルミや鉄)ということになります。 しかしながら、金属で作ることのできる形状はボトル、ジャー、耐圧のスプレー缶くらいで、意匠性付与という点から自由度がありません。 ガラスも遮光性は金属に劣りますが、酸素バリア、水蒸気バリアに優れます。香水のスプレーなど美しい容器がありますが、汎用的なビンを除き金属と同じく自由度は高くありません。よって生産者が目指す要求を満たし、消費者の期待を高めるような意匠性を持たせ、機能付与し、多種多様な形状に対応できるプラスチックは優れた素材です。
プラスチックの欠点
プラスチックは高分子の絡みあいで、分子間に隙間が存在するため、ガスバリア性をゼロにすることができません。ガスの透過量は透過する素材の厚みに反比例するため、プラスチックの厚みが厚いほどゼロに近づきますが、それも限界があります。ガス透過ゼロは理想ですが、製品のライフと消費される期間を考慮し、ガスバリア性のある素材を用いることができる形状であれば解決することができます。 主なハイバリア性素材とおおよその性能を挙げます。
- PVDC(ポリ塩化ビニリデン):PETフィルムにコートした場合 酸素透過は6ml/m2、水蒸気透過は7ml/m2 主にフィルムコートで用いられますが塩素が含まれるため燃焼時の大気汚染で敬遠されます。
- EVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体):酸素透過は1ml/m2、水蒸気透過は30g/m2 ガソリンタンクに使用されているプラスチックで耐内容物に優れます。湿度異存があり高湿度ではバリア値が低下します。細かい形状の成型には不向きな素材だと思います。
- 透明蒸着(シリカ、アルミナの蒸着):酸素透過、水蒸気透過共に<1ml/m2 母材上にガラスの薄膜を形成しているためアルミに匹敵する高いバリア性を有します。半面、ガラスのため、屈曲によるクラックでバリア性が低下します。
今現在、金属、ガラスに変わる最も有効なバリア性素材は透明蒸着です。今ではPETボトルの内面に蒸着が可能になっています(ワインのボトルや海外ではビールのボトルに使用されています) 化粧品の容器への施される蒸着はバリア性を目的とした蒸着ではなく、金属蒸着でありデコレーションが目的のため、高いバリア性は得られません。この透明蒸着が汎用的に行うことができるようになれば画期的ですが、内面への蒸着のため複雑な形状の場合、蒸着ムラの発生や、内容物の耐性から未だ一般的ではないと思われます。 ポーションタイプの液体、粉体包装であれば透明蒸着フィルムを使用したラミネートフィルムを選択することが可能ですが、プラスチック容器の場合ガスバリアは容器の厚みで解決しているのが現状と思われます。
遮光は光による化学変化防止の重要な機能
光による組成変化は主に紫外線が原因となります。紫外線は太陽光以外に照明光にも含まれ、とりわけ化粧品の場合はきらびやかに演出するため、棚にライトが付いており至近距離から長時間照射される環境になっています。LEDが主流になり波長もコントロールされてきましたが、特に紫外線は化学物質にとって反応のトリガーになるため遮るべきです。 紫外線で反応点が生成されると分解や、製品中に含まれる溶存酸素または外部から透過した酸素と反応し製品の酸化が連鎖的に起こります。 製品に例えばトコフェロール、オリザノール、アボベンゾンなどの安定剤添加、製品自体の効能として抗酸化作用、日焼け止めを謳った製品であれば自身の酸化や紫外線による変質を防止することができますが、包装設計の立場から言えば紫外線カットは無視できません。
もし内容物が見えなくても良いのであれば、容器のプラスチックを無機顔料で充分に着色にして光線透過をゼロにすれば解決できます。 内容物が見えると残量がわかるメリットがありますが、もし容器素材がポリオレフィンだった場合、紫外線は透過するためカットする必要があります。 紫外線はエネルギーの強い波長ですが、素材によって遮蔽することが可能です。 低波長側(~300nm) UB-C、UB-Bであれば、アクリル(PMMA)、ポリエステル(PET)を用いることによりおおよそカットすることができます。ただし可視光に近いUB-A(波長360~400nm付近)を無色透明でカットするのは非常に困難です。 酸化亜鉛をナノ分散させ光の散乱で透過を抑えたプラスチックは薄青色に曇っており、有機系UV吸収剤を添加したプラスチックは薄黄色を呈します。UVカットコートも素材により近い状態になります。 オレフィン系の容器でUB-C、UB-Bが影響を与えるのであれば容器素材をPMMA、PETへ変更、ラベルをPETにしてUVカットする方法、また容器外面にUVカットコートを施すのも手段の一つです。
容器包装への成分吸着
プラスチックへの成分吸着をゼロにすることは不可能です。 しかし、化粧品や健康食品は非常に微量な成分も含まれており、容器包装に吸着した場合、意図しない組成変化を招きます。 基本的に「同じものにはよく溶ける」現象で、油性であれば親油性の高い素材へ、水性であれば親水性の高い素材へ吸着します。加えて、使用するプラスチックの構造上似た成分は吸着しやすくなります。
熱によるシール封かん(ヒートシール)できる素材として、もっとも非吸着な素材はPAN(ポリアクリロニトリル)になります。医薬品にも使用されており、ガスバリア性も有しています。次に汎用的なA-PET(アモルファスPET)が挙げられます。A-PETは食品にも使用されており、臭いの強い食品(キムチなど)の容器に使用されています。ただし、耐薬品性に劣る一面があり、リモネンのような溶媒として働く成分が高濃度で存在する環境化ではストレスクラックを起こして溶解する可能性があります。これら吸着しにくい(非吸着素材)は機械強度が低い欠点があり大容量に不向きですが、化粧品、健康食品は重量もないため使用に耐えうる素材と思います。
もっとも安価で成形しやすいオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン)は耐薬品性に優れますが、非常に吸着しやすい素材です。油脂成分が多いと、浸透溶出してしまう場合があります。ただし高密度になるほど非結晶部分が少なくなるため傾向として吸着しにくくなります。 高透明で高級感のある素材のPMMAはA-PETと同じく、エステルや芳香族成分を吸着し侵されやすい性質があります。よってこれら成分を含む製品を直接充填することはお勧めできません。
容器包装設計を行う前に、素材と成分の作用を事前に確認しておくことを忘れていけません。
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