最終更新:2024/08/08
化粧品・健康食品包装の素材設計と製造方法
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容器包装を作るための素材、および構成設計と、デザインから製品化までの製造工程を説明しています。
環境負荷低減のための容器包装
マテリアルリサイクルが容易ではないことから、Reduce:減量減容は環境負荷低減への有効な近道です。それにはボトルのようなソリッドパッケージではなく、潰せるパッケージ、いわゆる詰め替えパウチがもっとも適しています。化粧品、健康食品は高級感が必要な製品ですので、業界的には違和感がありますが、化粧品、健康食品にチープなイメージを与える「詰め替えパウチ」という言葉を敢えて使わず「リフィル」と呼ぶことにします。
リフィルに使用される素材
素材はそれぞれの欠点を補った、貼り合わせフィルムの複合素材、ラミネートフィルムです。
使用される主な素材の略号と特徴
最外層、中間層に使用される素材(基材・延伸フィルム)
最外層に使用される素材は基本的に耐熱性に優れ、伸びない延伸されたフィルムが使用されます。印刷は最外層に施されます。
PET:ポリエステル(厚み12μm)
- 最も耐熱性と寸法安定性に優れる。
- 日常使用する範囲での湿度依存による物性変化はない。
- 表面光沢、マット調がありフィルム最表面に使用される。
- 機械的物性は高くなく、屈曲でピンホールが開きやすい。
- 耐薬品性に優れる。
- それ自体にバリア性は無いが、寸法安定性に優れるため、ガラスである透明蒸着はPET付与される。
Ny(PA):ナイロン(製品名)、正式にはポリアミド(厚み15、25μm)
- 機械物性、耐熱性に優れる。
- 主に耐ピンホール性によって内外応力・突き刺しによる貫通を避ける。
- ただし、耐スクラッチに劣る。
- 重量物、耐屈曲性が必要な場合、不可欠なフィルム。
- 湿度依存性あり。吸湿するため高湿度化でカールや伸びが発生する。
- 単体でも中程度のガスバリア性を有する。水蒸気バリアに劣る。
- 多層化してバリア性を高めたフィルムがある。(EVOH、MXD、PVDCコートなど)
PP:ポリプロピレン(OPP・主な厚み20μm)
- ポリオレフィン。安価。耐スクラッチ性に優れる。軽包装に使用される。
- 熱寸法安定性に劣る。
- 単体でガスバリア性は無い。高くはないが水蒸気バリア性を有する。
- PVDC、PVAコートやEVOHを多層化し、ガスバリア性を高めたフィルムがある。
- 透明、マット調がある。
EVOH:エチレン-ビニルアルコール共重合体
- 中間層に使用される。多層Ny、OPPの中間層に使用される。
- ハイガスバリア素材だが湿度依存が高く、高湿度化ではバリア性が低下する。
- 耐薬品性、保香性に優れる。
- M:主にAL(アルミニウム 厚み7μm)
- 遮光性、ガスバリア性、水蒸気バリア性とバリア性において最も優れる素材。
- 全ての値はゼロとなるため、センシティブな内容物保護のためバリアで悩んだ場合は最終的にAL構成となる。
- 焼却しても灰分として残るため環境を配慮すれば廃棄問題と、重量の欠点があり、脱アルミに取り組むケースが増えている。
紙
- 風合いや、デッドホールド性(折った後戻らない)を必要とした包材に使用される。
環境配慮が重視されるようになってから、紙は天然素材のため、持続可能素材の筆頭として注目されています。近年、紙への高機能化は形態も含め進歩しています。特にガスバリアを付与した紙が展示会でも話題になっています。しかし、紙単体ではシールできないため内面にコートしなければならない開発余地が残っています。包装全体量に占めるバイオマス由来の素材が多くなるため有用な素材です。
不織布
包装用ラミネートフィルムの場合、意匠性、風合いのみで使用されるととらえた方がよいと思います。材質はPP、ポリエステルが主で、サージカルマスクに使われるようになってから非常に身近な素材になりました。
最内層に使用される素材(シーラント)
最内層フィルムは内容物と接触するフィルムです。それゆえ溶出成分や使用できる添加剤の規制が強めになっています。
熱により溶けるため密着すれば封かんすることができます(ヒートシール)。延伸フィルムに貼り合わせて使用され、内容量により厚みを設定します。
PP:ポリプロピレン(CPP)
- 耐熱性に優れるが、機械物性特に耐衝撃に劣るため主に軽包装に使用される。
- OPPと組み合わせることによりモノマテリアル化が可能。
- 重量のある液体、特に衝撃が加わる製品には適さない。
- ヒートシールに高い温度が必要。そのため熱殺菌(レトルト殺)を必要とするフィルムに使用される。
- ガスバリア性はない。耐薬品性に優れるが油脂成分が多いと浸透する。
PE:ポリエチレン
- 様々な包装のシーラントに使用され、用途によってグレードが多数あり選択肢が広い。
- ヒートシール性に優れるため高速シールが可能。
- PPより耐熱性は劣るが幅広い温度域で使用できる。
- 包装で使用されるフィルムの中で最も耐寒性に優れる。
- 耐衝撃性にも優れ、柔軟性があるため軽包装から重量物まで使用される。
- PPよりもガスバリア性が低い。耐薬品性に優れるが油脂成分が多いと浸透する。
インク
ウレタン樹脂が主成分。近年、有機溶剤を使用しない大気汚染、残留溶剤に配慮した水性インキも用いられる。また、植物由来のバイオマスインキも上市され、環境に配慮したインキを 指定するケースが増加しています。
接着剤
インキ同様にウレタン樹脂がメインで使用される。イソシアネートとポリオールの反応型接着剤で内容物や耐熱性でグレードを使い分ける。 溶剤は酢酸エチルを使用し、貼り合わせ時に乾燥させ除去される。
ラミネートフィルムの設計
素材は内容物をどのように保護し、詰めるかによって選択されます。 現在、流通している製品のほとんどが遮光性とバリア性を要するためアルミを使用した積層フィルムになっています。 シーラントは減量するため強靭なポリエチレン使用し、可能な限り薄いものを使用します。化粧品には油脂や香料、アルコールなど、シーラントを通過し接着面にアタックし剥がしてしまう(デラミと言います)成分が多く含まれるため接着剤は食品に使われるものよりも耐内容物性に優れた接着剤を使用します。それらをドライラミネートという方法で接着積層しフィルムとして仕上げます。
例えば、スクリューキャップの注ぎ口(スパウト)の付いたフィルムの構成は PET//AL//Ny//PE (//はドライラミネートを意味する共通記号です)の積層フィルムとなります。 試供品のようなポーションであればPET(またはNy)//AL//PEになります。 もし金属を使わずにガスバリアを付与したい場合には、透明蒸着PET//Ny//PE、または透明蒸着PET//PEとなります。 設計の重要なポイントは
- 内容物の保持に適切な素材、接着方法を選択する
- 重量に対して過剰な設計をしない
- 充填機械の適性を十分に考慮する
- 無理のあるデザイン、サイズにしない
- 小ロットになるほど納期がかかりコストアップとなる
- 製造時でもロスの出にくい設計にする
少なくともこの6点に注意しなければ何かしらのトラブルが発生すると懸念があります。
ラミネート加工方法
リフィル用のフィルムは耐内容物の影響からほとんどがドライラミネート法という加工方法で製造されます。最終的なリフィルが完成するまでの工程順序を説明します。
1. 印刷工程
印刷をする前に、デザインを作成します。現在、プラマークや成分表示が義務付けられているため、表示項目が多くなり小型の製品ほどフォントが小さくレイアウトが困難になっています。デザイナーは全体のデザインが決まった時点で「青焼き」と呼ばれる見本を作製し、メーカーから校了をもらいます。その後、印刷に使用する版を作成します。 印刷は、ラミネートフィルムの場合、ほぼ凹版であるグラビア印刷が用いられます。鉄芯にクロームメッキが施され、彫刻機かレーザーで彫ります。カラーごとに版が作られインクもデザイナーの意図通りに印刷されるか立ち合いが行われます。 ラミネートフィルムの製造工程で、この立ち合いが最も時間を要し、試し刷りのためプラスチックロスとインキロスを、場合によって大量に排出するため問題になっています。 試し刷りが済んだのち、400~1200mm幅のロールを基材に本番印刷を行い「刷り本」と呼ばれるベースフィルムを製造します。
2. ラミネート
ドライラミネーターという大型の機械を使用して貼り合わせます。 刷り本に接着剤をグラビアロールで塗布したのち、乾燥炉で接着剤を希釈している溶剤(酢酸エチル)を除去します。乾燥炉から出てきたのち中間フィルム、シーラントをロールで挟み圧着、貼り合わせます。この時の速度は100m/分の速度で行われます。貼り合わされたロールは40℃以上に加温した部屋にエージングという接着剤の硬化のため、おおよそ24時間保管されます。 小ロットがコストアップになる理由はこのためで、400mm幅以上のフィルムを毎分100mで加工するため製造上、無理が生じるためです(不要な部分は廃棄するか、最小ロットが決められています)
3. 後工程
ラミネート加工の終わったロールは、スリットしロールに、リフィルのようにスパウトを取り付け袋状に製袋などの、充填方法に合った形態に加工されます。
包装設計は内容物の性質と素材の相性を十分に考慮し、消費者が使いやすい形態、購買意欲を高めるデザイン、そして環境配慮を意識しながら行うのが一連の基本動作となります。
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