表示名称成分詳細
アカマツエキス
成分番号(JP number): 561810
- INCI
- PINUS DENSIFLORA EXTRACT
- 定義(Description)
- 本品は、アカマツ Pinus densiflora のエキスである。Pinus Densiflora Extract is an extract of the whole plant of the Pine, Pinus densiflora, Pinaceae
- 日本の規制情報(Japanese regulation information)
- 中文inci(CN/中国名称)
- 中国の規制情報(Chinese regulation information)
- 韓国inci(KR/ハングル/성분명)
- 소나무추출물
- CAS No.
- 92202-05-06
- EC No.
- 296-037-7
- EUの規制情報(Restriction/Annex/Ref#)
-
原料情報
アカマツエキス / PINUS DENSIFLORA EXTRACT
アカマツエキスとは
アカマツエキスはマツ科マツ属の常緑高木針葉樹であるアカマツ(学名:Pinus densiflora)から抽出されたエキスです(1,2)。
なお、化粧品成分表示名称は「アカマツエキス」であり、成分番号は561810、INCI名はPinus Densiflora Extractとされています(1)。
原料となるアカマツは日本をはじめ、朝鮮半島や中国東北部など広く分布していることで知られており、屋久島が天然分布の南限地となっています(2)。
その樹皮は赤褐色または黄褐色をしていることが特徴であり、それが和名であるアカマツの由来となっていると言われています(2)。 葉は淡黄緑色を呈し、針状で細長く、球果は卵状円錐形で淡黄褐色をしています(2)。
また、アカマツは木材として建築材や土木用材などに利用されるだけではなく、木毛はパルプとして利用され、木からは松脂、葉からは香料や強壮剤の原料、根からはテレビン油やタールを採取できることでも知られています(2)。
さらに高級食材である松茸はアカマツの密集している林に生えることでも知られており、食品分野においても伝統的に利用されています(3)。
働きと用途
アカマツエキスの配合目的は酸化防止剤、収れん剤、皮膚保護剤、エモリエント剤、保湿・湿潤剤となっており、以下の作用があると考えられます(4)。
酸化防止作用
製造してから使用されるまで、含有される成分の酸化や変質による劣化を防ぎ、長期間の安定性を保持することは化粧品にとって重要です(5,6)。
この化粧品原料の酸化反応の防止、あるいは酸化反応を遅らせる目的で配合される成分を酸化防止剤と言います。
現時点では配合されている市販化粧品は確認できませんが、アカマツエキスの配合目的は酸化防止剤となっており、製品への酸化防止作用を有すると考えられます(4)。
収れん作用
化粧品科学の分野においては以下の作用のいずれか、または両方を有する成分を収れん剤と言います。
- アストリジェント(astringent):角層タンパク質であるケラチン収縮による肌の引き締め
- アンチパースピラント(antiperspirant):汗腺開口部の引き締め・凝固による発汗抑制
現時点では配合されている市販化粧品は確認できませんが、アカマツエキスの配合目的は収れん剤となっており、肌の引き締めや発汗をおさえる作用(収れん作用)があると考えられます(4)。
皮膚保護作用
皮膚保護剤とは皮膚表面に膜を作ることにより蓋をし、皮膚の水分の蒸散を防ぐ作用をもつ成分を言います。代表的な成分としてはワセリンがあり、スキンケア化粧品やボディ&ハンドケア製品に活用されています(7,8)。
現時点では配合されている市販化粧品は確認できませんが、アカマツエキスの配合目的も皮膚保護剤となっていることから、同様に表皮水分の蒸散を抑制することによる皮膚保護作用があると考えられます(4)。
エモリエント作用
皮膚の水分蒸散を抑え、皮膚に柔軟性や滑らかさを付与する皮膚生理作用をエモリエント作用と言い、その作用を目的に使用される疎水性の脂質成分をエモリエント成分と言います(9,10)。
現時点では配合されている市販化粧品は確認できませんが、アカマツエキスの配合目的はエモリエント剤となっており、皮膚に対するエモリエント作用があると考えられます(4)。
保湿・湿潤作用
皮膚や毛髪に水分を与え、さらに水分蒸散の抑制を目的に配合される成分を保湿・湿潤剤と言います(11)。
現時点では配合されている市販化粧品は確認できませんが、アカマツエキスの配合目的は保湿・湿潤剤となっており、皮膚や毛髪に水分を与え保持させる作用をもつことが考えられます(4)。
安全性について
アカマツエキスはアカマツ由来の天然のエキスです(1)。
また、現時点では安全性に関する重大な報告も見当たらず、化粧品配合量および通常使用下において一般的な使用であれば安全性に問題の無い成分であると考えられています。
但し、植物が原料となっていることからアレルギーを発症する可能性があり、念のため使用前にパッチテストを行うなど注意が必要です。
参考文献
(1)化粧品の成分表示名称リスト | 日本化粧品工業連合会 (jcia.org),https://www.jcia.org/user/business/ingredients/namelist 2022年1月6日アクセス.
(2)森林総合研究所 九州支所/アカマツ (affrc.go.jp),https://www.ffpri.affrc.go.jp/kys/business/jumokuen/jumoku/zukan/akamatu.html 2022年1月6日アクセス.
(3)農山村支援センター jirei201.pdf (nousanson.jp),http://nousanson.jp/satoyama/wp-content/uploads/2013/04/jirei201.pdf 2022年1月6日アクセス.
(4)アカマツエキス(化粧品):Cosmetic-Info.jp,https://www.cosmetic-info.jp/jcln/detail.php?id=10258 2022年1月6日アクセス.
(5)田村 健夫・廣田 博(2001)「酸化防止剤」香粧品科学 理論と実際 第4版,221-226.
(6)日光ケミカルズ株式会社(2006)「酸化防止剤」新化粧品原料ハンドブックⅠ,471-475.
(7)日光ケミカルズ株式会社(2016)「炭化水素」パーソナルケアハンドブックⅠ,28.
(8)広田 博(1997)「炭化水素類」化粧品用油脂の科学,54-60.
(9)化粧品用語集 | ライブラリー | 日本化粧品技術者会 SCCJ (sccj-ifscc.com),https://www.sccj-ifscc.com/library/glossary_detail/208 2022年1月6日アクセス.
(10)日本化粧品工業連合会(2013)「エモリエント剤」日本化粧品成分表示名称事典 第3版付録,620-628.
(11)保湿とエモリエント | 日本化粧品工業連合会 (jcia.org),https://www.jcia.org/user/public/knowledge/glossary/moisturizing 2022年1月6日アクセス.
アカマツエキスの配合目的
- 酸化防止作用
- 収れん作用
- 皮膚保護作用
- エモリエント作用
- 保湿・湿潤作用
アカマツエキスの安全性情報
なし
日本語論文
P-67 クマザサ・アカマツ葉・ニンジンエキス配合剤によるラット培養血管平滑筋細胞の増殖抑制作用
杉原 義享 , 是永 壮史 , 小屋 佐久次 , 恒枝 宏史 , 木村 郁子
和漢医薬学雑誌 18(supplement), 113, 2001
生薬製剤「松寿仙」及びその構成生薬のin vitroにおけるマクロファージ活性に及ぼす影響
富岡 秀雄 , 小屋 佐久次 , 佐竹 史明 , 中村 正 , 倉茂 達徳
北関東医学 50(6), 523-528, 2000
針葉樹エキスで人も自家用畑も健康--スギ・アカマツ・アスナロ・クマザサの青葉アルコールを生かす (わが家畑を病害虫からこの手で守る)
佐藤 明男
現代農業 78(6), 334-337, 1999-06
混合アレルゲンエキス及び構成アレルゲンエキス皮内反応の相互関係
石崎 達 [他] , 伊藤 幸治 , 梶野 宗幹
英語論文
Lee JW, Wu Q, Jang YP, Choung SY.Phytother Res. 2018 Jun;32(6):1135-1143. doi: 10.1002/ptr.6061. Epub 2018 Feb 27.PMID: 29484729
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Neuroprotective Effects of Korean Red Pine (Pinus densiflora) Bark Extract and Its Phenolics.
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