表示名称成分詳細
バニリルブチル
成分番号(JP number): 556773
- INCI
- VANILLYL BUTYL ETHER
- 定義(Description)
- 本品は、バニリルアルコールのブチルエーテルである。Phenol, 4-(Butoxymethyl)-2-Methoxy-
- 日本の規制情報(Japanese regulation information)
- 中文inci(CN/中国名称)
- 香兰基丁基醚
- 中国の規制情報(Chinese regulation information)
- 【已使用化妆品原料目录(2021年版)】Maximum Historical Usage in Rinse-off Cosmetics(%): 2.5, Maximum Historical Usage in Leave-on Cosmetics(%): 1.5
- 韓国inci(KR/ハングル/성분명)
- 바닐릴부틸에터
- CAS No.
- 82654-98-6
- EC No.
- -
- EUの規制情報(Restriction/Annex/Ref#)
-
原料情報
バニリルブチル / VANILLYL BUTYL ETHER
バニリルブチルとは
バニリルブチルとは
バニリルブチルは、4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒドであるバニリルアルコールとn-ブチル基(-CH2CH2CH2CH3)をエーテル結合した分子量210.27のバニリルブチルエーテルです(1)。
ラン科バニラ属のバニラビーンズから抽出される成分であり、香料として重要とされてきた歴史があります。
バニラビーンズはそのままではなく、何度もの発酵・乾燥を繰り返すことでようやく独特の香りが出てくるため、抽出工程に非常に手間がかかることが知られており、大変高価なものとして扱われてきました(2)。
バニリルブチルの効果
バニリルブチルは、皮膚に接触させると温感・熱感が付与されることが報告されています(3)。
温感付与効果機序としては、皮膚にある体温を維持するために環境の温度を感知する温度受容器官の温度感受性TRPチャネルが関係しています。
温度感受性TRPチャネルのうちの1つであるTRPV1は、主に自由神経終末に存在し、43℃以上の熱刺激やトウガラシの主成分であるカプサイシン(capsaicin)によって活性化する(∗1)熱刺激受容体(カプサイシン受容体)であることが知られています。
43℃は生体に痛みを引き起こす温度閾値と考えられており、カプサイシンが熱感だけでなくヒリヒリとした痛み刺激も活性化したり、また酸刺激(プロトン)でも活性化することから、TRPV1は熱刺激だけでなく痛み刺激の受容体でもあると考えられています。
カプサイシンはその構造にバニリル基を有しており、カプサイシンを皮膚に接触させるとこのバニリル基にTRPV1が応答し、活性化温度閾値が上昇することによって常温に近い温度で熱感が引き起こされます(4)(5)。
このことから、バニリルブチルはバニリル基を有していることから、TRPV1活性化によって、皮膚に接触させると温感・熱感が付与されると考えられています。
上記の効果を利用した製品として、ボディ&ハンドケア製品、リップ化粧品、頭皮ケア製品、入浴剤などに使用されています。
またバニリルブチルは、血行促進作用が長く続くということから、マッサージに使用するとむくみやセルライトの解消を効率的に行なうことができるという報告もあります。
この血行促進作用を持つバニリルブチルは、頭皮環境の改善効果が期待できるとの理由で、育毛シャンプーや頭皮ケア、育毛剤などにも配合されます。
さらにバニリルブチルは、少量でも香りが長く残るため、香料として添加されます(2)。
参考文献
(1) 「バニリン」岩波 理化学辞典 第5版 p1059
(2) https://www.recolor.jp/seibun/vanillyl_butyl.html 「Re:Color バニリルブチル」
(3) Ling-Chiao Chen, et al(2013)「Vanillyl Butyl Ether to Topically Induce Blood Cell Flux, Warming Sensation」Cosmetics & Toiletries
(4) 富永 真琴(2013)「温度感受性TRPチャネル」Science of Kampo Medicine(37)(3),164-175.
(5) 富永 真琴(2004)「温度受容の分子機構」日本薬理学雑誌(124)(4),219-227.
バニリルブチルの配合目的
- TRPV1活性化による温感付与効果
バニリルブチルの安全性情報
皮膚刺激性について
Symriseの安全性試験データより、共通して一部の被検者に皮膚刺激が報告されているため、一般に皮膚刺激性は非刺激-個人差のある皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。
また、皮膚刺激感はバニリルブチル単体より、バニリルブチルと1,2-アルカンジオール併用系のほうが有意に少ないことが明らかにされています。
バニリルブチルは適度であれば快適な温感および刺激感を付与する一方で、多すぎると灼熱感やヒリヒリ感といった不快刺激を感じることが知られており、また感受性の違いや温感や刺激感の感じ方の違いに個人差があることが考えられます。
そのため、製品によっては意図して適度な刺激感を付与したり、あるいは低減したり様々な処方で使用されています。
眼刺激性について
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。
皮膚感作性(アレルギー性)について
20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。
日本語論文
なし
英語論文
なし