表示名称成分詳細
オリーブ脂肪酸Na
成分番号(JP number): 555870
- INCI
- SODIUM OLIVATE
- 定義(Description)
- 本品は、オリーブ油(*)から得られる脂肪酸のナトリウム塩である。Fatty acids, olive-oil, sodium salts
- 日本の規制情報(Japanese regulation information)
- 中文inci(CN/中国名称)
- 橄榄油酸钠
- 中国の規制情報(Chinese regulation information)
- 【已使用化妆品原料目录(2021年版)】Maximum Historical Usage in Rinse-off Cosmetics(%): 62, Maximum Historical Usage in Leave-on Cosmetics(%): 0.004
- 韓国inci(KR/ハングル/성분명)
- 소듐올리베이트
- CAS No.
- 61789-88-6
- EC No.
- 263-096-5
- EUの規制情報(Restriction/Annex/Ref#)
-
原料情報
オリーブ脂肪酸Na / SODIUM OLIVATE
オリーブ脂肪酸Naとは
[化粧品成分表示名称]
・オリーブ脂肪酸Na
オリーブ脂肪酸Na(Sodium Olivate)は、モクセイ科植物オリーブの果実から得られるオリーブ果実油のナトリウム塩(脂肪酸アルカリ金属塩)です。一般に「石けん(セッケン)」と呼ばれる成分に分類される、陰イオン界面活性剤(アニオン界面活性剤)です。
石けんであるオリーブ脂肪酸Naは、脂肪酸トリグリセリドを主成分とするオリーブ果実油を、水酸化ナトリウムのアルカリ溶液でけん化し、副生するグリセリンを取り除く「けん化法」により調製されます(1)。
高級脂肪酸または油脂が水酸化ナトリウムと反応して出来た成分は、総称して「石ケン素地」と呼ばれ、主に固形石けんに用いられます。
オリーブ果実油に含まれる脂肪酸組成は、オリーブの栽培されている地域や抽出方法によっても異なりますが、主に下記の脂肪酸が含まれています(2)。(カッコ内の数字は炭素数と二重結合数を示しています)
・オレイン酸 (C18:1) 53-86%
・パルミチン酸 (C16) 7.5-20%
・リノール酸 (C18:2) 3.5-20%
・ステアリン酸 (C18) 0.5-3.5%
・パルミトレイン酸 (C16:1) 0.3-3.5%
・リノレン酸 (C18:3) 0-1.5%
上記より、オリーブ脂肪酸Naは炭素数18の一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸のナトリウム塩を主体とした石けんであることが分かります。一般に、オレイン酸塩を主成分とする石けんは、水によく溶け、洗浄力に優れているという特徴があります(1)。
界面活性剤としてのオリーブ脂肪酸Na
親水基としてカルボン酸塩を含んでいるオリーブ脂肪酸Naは、陰イオン界面活性剤(アニオン界面活性剤)に分類されます。
アニオン界面活性剤は、一般に起泡性・浸透力・分散力に優れているという特徴があります。油への溶解性は低いため、一般にはノニオン界面活性剤よりも乳化力が劣りますが、泥汚れなどの洗浄力が高いことが知られています(1)。
オリーブ脂肪酸Naのようにアニオン界面活性剤の中でも特に石けんに分類されるものは、その起泡性や洗浄力の高さから、身体洗浄料、洗顔料、衣料用洗剤、ハウスホールド用の洗剤の基剤として古くから用いられてきました。石けんには、黄色ブドウ球菌などのグラム陽性球菌に対する殺菌性を示すことも知られています。(1)。
石けんは毒性も低く、気泡性や乳化安定性に優れていますが、いくつかの欠点があります。石けんは、pH の低い領域ではカルボン酸が -COOH の酸型の状態となるため、界面活性剤として働くことが出来ません。また、カルシウムなどの塩類を含む硬水中では、水にほとんど溶けないカルシウム石けんなどの金属石けんが生成、沈殿するため、気泡性・乳化性が低下します(1)。
一般に、石けんは天然油脂から調製されますが、天然油脂中にはアルキル鎖長や不飽和度の異なるさまざまな脂肪酸が含まれており、界面における挙動がそれぞれ異なることに注意する必要があります(1)。
オリーブ脂肪酸Naの化粧品への配合
オレイン酸のナトリウム塩を主体とした石けんであるオリーブ脂肪酸Naは、水によく溶け、洗浄力に優れているという特徴があることから、主に石けんや洗顔フォームの洗浄成分として使用されています(3)。また、一般に石けんには湿潤作用や乳化作用を有していることも知られています(4)。
Cosmetic Ingredient Reviewでは、さまざまな安全試験データから、安全性評価論文内で説明されている現在の使用方法と濃度内で処方された場合のオリーブ脂肪酸Naの安全性が結論づけられています(2)。
アメリカ食品医薬品局(FDA)が実施する化粧品自主登録プログラム(VCRP)によると、2010年時点で、オリーブ脂肪酸Naを配合している製品の登録数は合計16で、そのうちリーブオン製品は5 製品、リンスオフ製品は11製品でした。製品への含有量について2010 年にパーソナルケア製品評議会が実施した調査によると、オリーブ脂肪酸Naは4%から18%の配合率で使用されていました(2)。
参考文献
- 野々村美宗 (2015)「アニオン界面活性剤」化粧品医薬部外品医薬品のための界面化学, 43-48
- Cosmetic Ingredient Review (2017)「Safety Assessment of Plant-Derived Fatty Acid Oils」International Journal of Toxicology (36) (Supplement3), 51S-129S
- 宇山光男, 他 (2015)「高級脂肪酸アルカリ金属塩」化粧品成分ガイド 第6版, 133
- 鈴木一成 (2008)「石ケン素地」化粧品成分用語事典2008, 407
オリーブ脂肪酸Naの配合目的
- 洗浄剤
- 乳化剤
オリーブ脂肪酸Naの安全性情報
試験データをみるかぎり皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。
セッケンの皮膚刺激性に関しては、
ラウリン酸(C₁₂) ← ミリスチン酸(C₁₄) ← オレイン酸(C₁₈) ← パルミチン酸(C₁₆) ← ステアリン酸(C₁₈)
この順に皮膚刺激が強いことが知られており、またナトリウムセッケンよりカリウムセッケンのほうが刺激性が強く[13]、セッケンの中ではラウリン酸カリウムセッケンが最もスティンギング(∗3)が強いと報告されており[14]、これらの報告は試験データと同様の結論ですが、一般に洗浄製品のような短時間の非連続使用として皮膚から完全に洗い流すように設計された製品において、セッケンが皮膚に与える影響は極めて少ないことが明らかにされています[15]。
C.L. Burnett, et al(2017)「Safety Assessment of Plant-Derived Fatty Acid Oils」International Journal of Toxicology(36)(3_suppl),51S-129S. DOI:10.1177/1091581817740569.
Leroy D. Edwards(1939)「The pharmacology of SOAPS」Journal of the American Pharmaceutical Association(28)(4),209-215. DOI:10.1002/jps.3080280404.
奥村 秀信(1998)「皮膚刺激感(痛み)について」日皮協ジャーナル(39),78-82.
岩本 行信(1972)「セッケン」油化学(21)(10),699-704. DOI:10.5650/jos1956.21.699.
https://online.personalcarecouncil.org/ctfa-static/online/lists/cir-pdfs/PRS577.pdf
日本語論文
なし
英語論文
なし