表示名称成分詳細
セリシン
成分番号(JP number): 555081
- INCI
- SERICIN
- 定義(Description)
- 本品は、カイコ Bombyx mori から得られる絹から分離したタンパクである。Sericin is a protein isolated from the silk produced by the silkworm, Bombyx mori
- 日本の規制情報(Japanese regulation information)
- 中文inci(CN/中国名称)
- 蚕丝胶蛋白
- 中国の規制情報(Chinese regulation information)
- 【已使用化妆品原料目录(2021年版)】Maximum Historical Usage in Rinse-off Cosmetics(%): 9, Maximum Historical Usage in Leave-on Cosmetics(%): 5
- 韓国inci(KR/ハングル/성분명)
- 세리신
- CAS No.
- 60650-88-6/60650-89-7
- EC No.
- -/-
- EUの規制情報(Restriction/Annex/Ref#)
原料情報
セリシン / SERICIN
セリシンとは
セリシンはカイコガ科カイコガの繭の絹繊維から加熱処理とエタノールで抽出・精製して得ることができる水溶性の繊維状タンパク質です。
なお化粧品成分表示名称は「セリシン」ですが、医薬部外品表示名称は「加水分解シルク末」となっています。
蚕の作る絹糸は主に中心部にあるフィブロインと周囲を覆うセリシンで構成され、セリシンが繊維同士をくっつきやすくする働きをしています。
絹糸の約25%はセリシンであり、その主要成分はセリンやグリシン、アスパラギン酸などで組成されています(1)。
そのアミノ酸組成比はヒト皮膚におけるアミノ酸構成比と似ていることから付着性に優れ、さらに水酸基を有するセリンとトレオニンが約40%を占めていることから保湿性にも優れていると考えられています(2,3)。
また、セリシンについては髪や皮膚を若返らせる効果があるとして古くから使用されていました。
化粧品成分としては保湿成分や抗酸化成分、美白成分に分類され、それらの作用を目的として、スキンケア化粧品やボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品など様々な製品に活用されています(1,4)。
保湿作用
1998年にコスモステクニカルセンター社の行った検証によると、セリシンを健常な皮膚に適用したところ保湿作用と経表皮水分蒸散の抑制効果を有することが確認されました(4)。
この検証結果により、セリシンには角質層水分量増加および経表皮水分蒸散抑制による保湿作用が認められています。
抗酸化作用
ヒトの皮膚や細胞には皮脂を始めとした脂質が存在しており、この脂質の酸化が進んだ過酸化脂質が増加することにより皮膚の老化が促進されることが知られています。
1998年に行った広島大学生物生産学部とセーレン社の共同研究によると、セリシンには脂質の過酸化抑制効果があると認められました(1)。
セリシンの抗酸化能に関する作用メカニズムを明らかにするものではありませんが、この結果により、セリシンには過酸化脂質抑制による抗酸化作用が認められました。
色素沈着抑制作用
1998年に行った広島大学生物生産学部とセーレン社の共同研究によると、色素沈着の抑制において重要なチロシナーゼの活性阻害効果について検討したところ、セリシンにはチロシナーゼ活性の抑制作用があることが分かりました(1)。
この検証結果により、セリシンにはチロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用が認められました。
安全性
セリシンは医薬部外品原料規格2021に収載されています。
また、皮膚刺激性については殆どなく、皮膚感作性についてもアレルギー性は殆どないため、化粧品配合量および通常使用下において一般的な使用であれば安全性に問題の無い成分であると言われています。
参考文献
(1)N.Kato, et al(1998)「Silk Protein, Sericin, Inhibits Lipid Peroxidation and Tyrosinase Activity.」Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry(62)(1),145-147.
(2)SPIER HW, et al(1956)「Analytical and functional physiology of the skin surface.」Hautarzt(7)(2),55-60.
(3)R.Voegeli(1993)「Sericin silk protein:unique structure and properties.」Cosmetics&Toiletries(108),101-108.
(4)R.Voegeli(1998)「セリシンの皮膚保湿・抗シワ効果」Fragrance Journal(26)(4),70-74.
セリシンの配合目的
- 角質層水分量増加およびバリア保護による保湿作用
- 過酸化脂質抑制による抗酸化作用
- チロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用
セリシンの安全性情報
https://online.personalcarecouncil.org/ctfa-static/online/lists/cir-pdfs/PRS699.pdf
日本語論文
寺本 英敏
オレオサイエンス 20(12), 543-548, 2020
武智 多与理 , 高村 仁知 日本調理科学会大会研究発表要旨集 24(0), 183, 2012
武智 多与理 , 原田 和樹 日本調理科学会大会研究発表要旨集 23(0), 58-58, 2011
武智 多与理 , 杉村 順夫 , 前川 善一郎 日本調理科学会大会研究発表要旨集 22(0), 72-72, 2010
栗岡 聡 , 山崎 昌良 , 近 達也 大日本蚕糸会研究報告 (54), 27-31, 2006-12
安田 勝年 , 山崎 昌良 , 山本 俊雄 日本蚕糸学会 学術講演会 講演要旨集 2003(0), 133-133, 2003
埼玉ブランド蚕品種「いろどり」シルクタンパク質セリシンのチロシナーゼ阻害活性について
近 達也 , 小林 明 埼玉県農林総合研究センター研究報告 (2), 89-94, 2002-10
セリシンの新規機能性と化粧品および食品への応用 (特集(1)絹の新たな機能性を探る)
加藤 範久 , 佐々木 真宏 フレグランスジャーナル 28(4), 28-33, 2000-04
セリシンの皮膚保湿・抗シワ効果 (特集/シワの成因と抗シワ化粧品の開発)
Voegeli Rainer フレグランスジャーナル 26(4), 70-74, 1998-04
機能性を高めたセリシン繭を生産するカイコ品種
間瀬啓介ほか
BIO INDUSTRY, 24, 53-59 (2007)
セリシンホープ繭層からの高分子量セリシンハイドロゲルの作製
寺本英敏ほか
日本シルク学会誌 : 日本シルク学会研究発表要旨集録, 13, 142-143 (2004/12/01)
セリシンハイドロゲルの物質吸着特性
寺本英敏ほか
日本シルク学会誌 : 日本シルク学会研究発表要旨集録, 14, 122-123 (2005/12/01)
セリシンの新規機能性と化粧品および食品への応用 (特集(1)絹の新たな機能性を探る)
加藤範久ほか
Fragrance journal, 28, 28-33 (2000/04)
"レジスタントプロテイン"としてのそばタンパク質とセリシンの生体調節機能
加藤範久
製糸夏期大学, 54, 25-32 (2001)
絹タンパク質セリシンの動的細胞培養への有効性
寺田聡
Bioscience & industry, 60, No.10, 683-684 (2002/10/01)
2C11-1 セリシンによる細胞増殖促進と細胞保護効果
寺田聡ほか
日本生物工学会大会講演要旨集, vol.平成15年度, p.90 (2003/08/25)
シルクへの招待
小松計一
サイエンスハウス社, 東京 (1997)
セリシン加工綿布のUVカット効果
浜岡容子ほか
京都府織物・機会金属振興センター研究報告 No.36, 10-15 (2002)
英語論文
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