表示名称成分詳細
乳酸Na
成分番号(JP number): 553107
- INCI
- SODIUM LACTATE
- 定義(Description)
- 本品は、乳酸(*)のナトリウム塩であり、次の化学式で表される。Sodium lactate
- 日本の規制情報(Japanese regulation information)
- 中文inci(CN/中国名称)
- 乳酸钠
- 中国の規制情報(Chinese regulation information)
- 【已使用化妆品原料目录(2021年版)】Maximum Historical Usage in Rinse-off Cosmetics(%): /, Maximum Historical Usage in Leave-on Cosmetics(%): /, 備考: 按照《化妆品安全技术规范》要求使用
- 韓国inci(KR/ハングル/성분명)
- 소듐락테이트
- CAS No.
- 72-17-3 / 867-56-1
- EC No.
- 200-772-0 / 212-762-3
- EUの規制情報(Restriction/Annex/Ref#)
-
原料情報
乳酸Na / SODIUM LACTATE
乳酸Naとは
乳酸Naは有機酸の一種である乳酸のナトリウム塩であり、粘性の無色透明な液体で、無臭またはわずかな特異臭をもっています(1,2,3)。
なお、化粧品表示名称としては「乳酸Na」ですが、医薬部外品表示名称は「乳酸ナトリウム液」となっています。
医薬品分野では電解質補正を目的とした電解質補液への添加のほか、安定・安定化、緩衝、等張化、pH調整目的の医薬品添加剤として静脈内注射や外用剤にも用いられています(4,5)。
また、天然保湿因子(NMF:natural Moisturizing Factor)中に存在している重要な天然の保湿成分であり、高い吸湿力を有していることでも知られています。
そのため化粧品成分として保湿作用や緩衝作用が期待され、それらの作用を目的に、スキンケア化粧品やシャンプー製品など様々な製品に活用されています。
なお、その活用形態は単体の原料として製品に配合するほか、他の成分との混合原料として配合されている場合もあります。
保湿作用
角質層における水分保持の働きをもつ天然保湿因子の一つである乳酸は単体では角質を柔軟化する役割をもっていますが、乳酸Naとしてはその優れた吸収性と保水性により天然保湿因子の吸湿作用の中心的な役割を担っていることが知られています(6,7)。
1989年に慶應義塾大学理工学部と川研ファインケミカル社が行った検証によると、乳酸Naはいずれの湿度条件においても顕著な吸湿性と保水性を示しました。さらに即応性は劣るものの、徐々に吸水が起こり、40時間経過後にはヒアルロン酸Na以上の吸湿性があることも確認しています(8)。
この検証結果により、水分量増加および柔軟持続性向上による保湿作用が認められています。
pH調整による緩衝
ヒトの皮膚は弱酸性であることが知られていますが、入浴などで中性に傾いたとしても直ぐに弱酸性に保たれています。これは外からの作用に対してその影響を和らげようとする緩衝作用が働いているためです。
化粧品においてもpH変動が起こるとその効果が発揮されなくなるため、緩衝剤の一つとして乳酸と乳酸Naを組み合わせたものが使用されています(9)。
安全性
乳酸Naは食品添加物の指定添加物リストのほか、日本薬局方や医薬部外品原料規格2021にも収載されており、40年以上の使用実績があります。
また、皮膚刺激性については殆どなく、皮膚感作性についてもアレルギー性は殆どないため、化粧品配合量および通常使用下において一般的な使用であれば安全性に問題の無い成分であると言われています。
参考文献
(1) 日本化粧品工業連合会(2013)「乳酸Na」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,730.
(2) 有機合成化学協会(1985)「乳酸ナトリウム」有機化合物辞典,677.
(3) 鈴木 一成(2012)「乳酸ナトリウム液(表示名:乳酸Na)」化粧品成分用語事典2012,129.
(4) 浦部 晶夫, 他(2021)「乳酸ナトリウム」今日の治療薬2021:解説と便覧,537.
(5) 日本医薬品添加剤協会(2021)「乳酸ナトリウム液」医薬品添加物事典2021,444-445.
(6) 尾沢 達也, 他(1985)「皮膚保湿における保湿剤の役割」皮膚(27)(2),276-288. DOI:10.11340/skinresearch1959.27.276.
(7) 朝田 康夫(2002)「皮膚と水分の関係」美容皮膚科学事典,90-103.
(8) 松村 秀一, 他(1989)「キチン及びキトサン誘導体の合成と吸・保湿性」油化学(38)(6),492-500. DOI:10.5650/jos1956.38.492.
(9) 田村 健夫・廣田 博(2001)「皮膚収れん剤」香粧品科学 理論と実際 第4版,246-248.
乳酸Naの配合目的
- 水分量増加および柔軟持続性向上による保湿作用
- pH調整による緩衝
乳酸Naの安全性情報
日本語論文
山岸 あづみ , 青江 誠一郎
人間生活文化研究 2013(23), 176-178, 2013
アルギン酸カルシウムからのカルシウム脱離に及ぼす有機酸ナトリウム塩の影響
中川 禎人 , 奥田 弘枝 日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology 43(5), 526-534, 1996-05-15
12%乳酸ナトリウム液単純塗布によるアトピー性皮膚炎などの〓痒に対する速効的止痒効果
中嶋 弘 , 山田 利恵 , 中嶋 英子
日本小児皮膚科学会雑誌 = Journal of pediatric dermatology 24(2), 219-224, 2005-11-30 医中誌Web 参考文献8件
英語論文
Onoda H, Haruki M, Toyama T.Int J Cosmet Sci. 2014 Aug;36(4):321-6. doi: 10.1111/ics.12129. Epub 2014 May 10.PMID: 24749906
Sugawara T, Kikuchi K, Tagami H, Aiba S, Sakai S.J Dermatol Sci. 2012 May;66(2):154-9. doi: 10.1016/j.jdermsci.2012.02.011. Epub 2012 Mar 1.PMID: 22464763
Using skin models to assess the effects of a protection cream on skin barrier function.
zur Mühlen A, Klotz A, Weimans S, Veeger M, Thörner B, Diener B, Hermann M.Skin Pharmacol Physiol. 2004 Jul-Aug;17(4):167-75. doi: 10.1159/000078819.PMID: 15258447
Fulton JE, Suarez M, Silverton K, Barnes T.Dermatol Surg. 1998 Aug;24(8):857-65. doi: 10.1111/j.1524-4725.1998.tb04263.x.PMID: 9723050