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水添レシチンとは

[化粧品成分表示名称]

・水添レシチン

[医薬部外品表示名称]

・水素添加大豆リン脂質

・水素添加卵黄レシチン

水添レシチン（Hydrogenated Lecithin）は、自然界に存在するあらゆる動植物が有する細胞膜の主要な構成成分でリン脂質と呼ばれる脂質の一種であるレシチンに、水素を添加したレシチン誘導体です。両性界面活性剤に分類されます。

医薬部外品表示名称としては「水素添加大豆リン脂質」や「水素添加卵黄レシチン」という名前が使われています。

一例として、大豆レシチンに含まれる脂肪酸組成は、大豆の栽培されている地域や抽出方法によっても異なりますが、主に下記の脂肪酸が含まれています(1)。（カッコ内の数字は炭素数と二重結合数を示しています）

・リノール酸 (C18:2)　53-57%

・パルミチン酸 (C16)　17-21%

・オレイン酸 (C18:1)　12-15%

・リノレン酸 (C18:3)　6-7%

・ステアリン酸 (C18)　4-6%

上記の通り、大豆レシチンはリノール酸、オレイン酸、リノレン酸などの不飽和脂肪酸を多く含んでおり、非常に酸化しやすい性質があります。

そこで、酸化しやすい構造のレシチンのアシル基に水素を添加することで飽和度を高め、酸化安定性を高めたものが水添レシチンです。

界面活性剤としての水添レシチン

カチオン基の4級アンモニウム塩と、アニオン基のリン酸エステル塩を含んでいる水添レシチンは、両性界面活性剤に分類されます。水素添加の加工が施されていますが、一般に水添レシチンは天然の界面活性剤とされています。

天然の界面活性剤である水添レシチンは、化粧品以外にも食品分野で主に乳化剤として汎用されています。

水添レシチンの化粧品への配合

天然の細胞膜の成分から調製される水添レシチンは、細胞間脂質と同様の性質を持っており、角層になじみやすく、優れた保護効果があります。乾燥による肌荒れを防ぎ、柔軟な肌に整える目的で、クリームや乳液、美容液などのスキンケア製品やメイクアップ製品など幅広い製品に使用されています(2)。

水添レシチンは非活性剤系分散剤、皮膚コンディショニング剤、乳化剤としての働きも知られています(3)。

Cosmetic Ingredient Reviewでは、さまざまな安全試験データから、安全性評価論文内で説明されている現在の使用方法と濃度内で処方された場合の水添レシチンの安全性が結論づけられています(3)。

アメリカ食品医薬品局（FDA）が実施する化粧品自主登録プログラム（VCRP）によると、2015年時点で、水添レシチンを配合している製品の登録数は合計684で、そのうちリーブオン製品は605製品、リンスオフ製品は78製品でした(3)。

製品への含有量について2014年にパーソナルケア製品評議会が実施した調査によると、水添レシチンはリーブオン製品で0.000001%から5%、リンスオフ製品で0.00055%から5%の配合率で使用されていました(3)。

参考文献

日光ケミカルズ (2006)「天然界面活性剤各論」新化粧品原料ハンドブックⅠ, 275-286
宇山光男, 他 (2015)「水添レシチン」化粧品成分ガイド第6版, 136
Cosmetic Ingredient Review (2020)「Safety Assessment of Lecithin and Other Phosphoglycerides as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology 2020, Vol. 39 (Supplement 2) 5S-25S

水添レシチンの配合目的

非活性剤系分散剤
皮膚コンディショニング剤
乳化剤

水添レシチンの安全性情報

https://online.personalcarecouncil.org/ctfa-static/online/lists/cir-pdfs/PRS686.pdf

https://online.personalcarecouncil.org/ctfa-static/online/lists/cir-pdfs/PRS329.pdf

日本語論文

水添レシチンが形成する高次会合体を利用した100%天然成分のオイルゲル化剤 (特集化粧品の新素材と新技術の動向(1))

長島友美 , 脇田和晃 Fragrance journal : Research & development for cosmetics, toiletries & allied industries = フレグランスジャーナル : 香粧品科学研究開発専門誌 45(3), 68-71, 2017-03

水添レシチンを用いたエマルションの安定性と保水効果

永留重実 [他] 福岡大学理学集報 24(2), p113-119, 1994-11