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水添パーム核油（硬化油）とは

水添パーム核油は、パーム核油に水素を添加することで、不飽和脂肪酸を飽和脂肪酸にして得られるトリグリセリドで、化粧品成分表示名称では水添パーム核油ですが、医薬部外品表示名称では硬化油として表示されます。

水素添加は、1897年にポール・サバティエによって発見された処理方法であり(1)、ニッケルなどの金属触媒を用いて、不飽和脂肪酸の不飽和結合部分に水素を添加し、飽和結合に変えることで、酸化安定性を高め、常温で個体状にする化学的処理になります。

水添パーム核油の元になるパーム核油は、ヤシ科の植物であるギニアアブラヤシ（学名：Elaeis guineensis）の種子（パーム核）から抽出される植物性の油脂です。

ギニアアブラヤシは、アンゴラやガンビア周辺の西アフリカが原産とされ、昔から中部アフリカの熱帯雨林で、種子から油脂を得る目的で栽培されています。

パーム核油の脂肪酸成分は、抽出方法や栽培される国や地域、時期によって変化があるものの、飽和脂肪酸であるラウリン酸や不飽和脂肪酸であるオレイン酸が多くなっており、ヤシ油と類似した脂肪酸組成になっています(2)。酸化安定性が低い不飽和脂肪酸よりも、酸化安定性が高い飽和脂肪酸の含有量が多いため、パーム核油の酸化安定性はかなり高いと考えられています。

水添パーム核油は、他の水添された油脂成分とは異なり、酸化安定性の向上を目的としているわけではなく、液状の油脂の固形化を目的として水添が行われています。実際に水添パーム核油は、融点が46℃で乾燥性もほとんどないため、常温で個体を維持することができます。

上記のように、水添パーム核油は酸化安定性が高いため、ベタつかずさぱりとした触感を与えるとされています(3)。さらに、油成分でありばがら個体を維持できるため、油性基剤の硬さや粘性を調節することもできます。そのため、水添パーム核油は、メイクアップ化粧品やスキンケア化粧品、ボディ＆ハンドケア製品などに使用されています。

水添パーム核油（硬化油）の安全性に関して

試験結果からは、皮膚への刺激性に関しては、報告されていません(3)。また、皮膚への感作性に関しても試験結果からは報告がありません(3)。しかし、目への刺激性に関しては、軽度の刺激性があることが報告されています(3)。

以上のことから、皮膚の刺激性や感作性が低いことから、皮膚への安全性は比較的高いと考えられます。一方で、目へは軽い刺激性が報告されているため、使用状況によっては眼刺激性が起こる可能性があると考えられます。

参考文献

(1)　Cordain L, Eaton SB, Sebastian A, et al. (2005). “Origins and evolution of the Western diet: health implications for the 21st century”. Am. J. Clin. Nutr. 81 (2): 341–54.

(2)　日本油化学協会（1990）「植物油脂の脂肪酸組成」油脂化学便覧改訂3版,104-110.

(3)　Cosmetic Ingredient Review（2000）「Final Report on the Safety Assessmentof Elaeis Guineensis (Palm) Oil, Elaeis Guineensis (Palm) Kernel Oil, Hydrogenated Palm Oil and Hydrogenated Palm Kernel Oil」International Journal of Toxicology(19)(2),7-28.