表示名称成分詳細
加水分解シルク
成分番号(JP number): 552845
- INCI
- HYDROLYZED SILK
- 定義(Description)
- 本品は、絹たん白を酸、酵素又は他の方法により加水分解して得られるものである。Protein hydrolyzates, silk
- 日本の規制情報(Japanese regulation information)
- 中文inci(CN/中国名称)
- 水解蚕丝
- 中国の規制情報(Chinese regulation information)
- 【已使用化妆品原料目录(2021年版)】Maximum Historical Usage in Rinse-off Cosmetics(%): (none), Maximum Historical Usage in Leave-on Cosmetics(%): 25.978
- 韓国inci(KR/ハングル/성분명)
- 하이드롤라이즈드실크
- CAS No.
- 96690-41-4
- EC No.
- 306-235-8
- EUの規制情報(Restriction/Annex/Ref#)
原料情報
加水分解シルク / HYDROLYZED SILK
加水分解シルクとは
加水分解シルクはカイコガ科カイコガ(学名:Bombyx mori 英名:Silkworm)の繭の絹繊維を構成するたんぱく質であるフィブロインを酸やアルカリ、またはたんぱく質分解酵素の下で加水分解することで得ることができる可溶性たんぱく質の水またはエタノール溶液です。類白色から黄褐色を呈し、若干の特異臭をもちます(1)。
なお化粧品成分表示名称は「加水分解シルク」ですが、医薬部外品表示名称は「加水分解シルク液」や「加水分解シルク末」となっています。
原料である繭の絹糸の約70%を占めている成分はアミノ酸であり、加水分解シルクについても加水分解の方法による組成変動はあるものの、その構成は同じであると考えられます。特にグリシンやアラニン、セリン、チロシンが多く含まれ、酸性アミノ酸や塩基性アミノ酸は殆ど存在していません(2,3)。
化粧品成分としては保湿成分やバリア改善成分に分類され、それらを目的として、スキンケア化粧品やメイクアップ化粧品、洗浄製品など様々な製品に活用されています(3,5,6,7)。
加水分解シルクの配合目的
- 緻密な皮膜性を有する保湿作用
- 表皮細胞の情報伝達正常化によるバリア改善作用
- まつ毛への付着
保湿作用
加水分解シルクは水に溶解すると粘着性のある皮膜を形成する作用があります。
他のたんぱく質加水分解物に比べると吸湿性は少ないものの、構成しているアミノ酸組成が人の天然保湿成分であるアミノ酸組成と非常に似ているという特徴があります。そのため皮膚や毛髪に対する吸着性や浸透性に優れており、良質な保湿作用をもつことが認められています(1,4)。
バリア改善作用
資生堂社の公開した2005年の技術資料によると、加水分解シルク水溶液は無添加の場合に比べ、皮膚バリアの回復効果を有することが確認されています(6)。
この検証結果により、加水分解シルクには表皮細胞の情報伝達正常化によるバリア改善作用が認められています。
まつ毛への付着
水に溶解する加水分解シルクには粘着性の皮膜を形成する作用があり、まつ毛への付着性を向上させます。さらに乾燥すると柔らかな皮膜を形成することからまつ毛同士が付着しあう束付き現象も起こらないことで知られています(7)。
加水分解シルクの安全性情報
https://online.personalcarecouncil.org/ctfa-static/online/lists/cir-pdfs/PRS699.pdf
安全性
加水分解シルクは医薬部外品原料規格2021に収載されています。
また、皮膚刺激性や皮膚感作性、光毒性、光感作性については殆どないと考えられており、化粧品配合量および通常使用下において一般的な使用であれば安全性に問題の無い成分であると言われています。
参考文献
(1)鈴木一成(2012)「加水分解シルク」化粧品成分用語事典2012. 中央書院,176
(2)塩崎 英樹, 他(1969)「フィブロイン繊維のアミノ酸分布について」日本蚕糸学雑誌(38)(3),230-236.
(3)大海 須恵子, 他(2000)「シルク加水分解物類およびそれらの誘導体について」Fragrance Journal(28)22-27.
(5)日光ケミカルズ株式会社(2016)「アミノ酸およびペプチド」パーソナルケアハンドブックⅠ,410.
(6)株式会社資生堂(2005)「皮膚バリアー機能回復促進剤」特開2005-002063.
(7)大東化成工業株式会社(2016)「睫用化粧料」特開2016-041673.
日本語論文
加水分解コンキオリン及び加水分解シルクの毛髪ツヤ改善作用について (ヘアケアの新技術と製品開発の動向)
橋井 洋子
Fragrance journal : Research & development for cosmetics, toiletries & allied industries = フレグランスジャーナル : 香粧品科学研究開発専門誌 47(6), 47-54, 2019-06
界面制御機能を有する新規両親媒性高分子の特性と応用(第2報)
上利 佳輝 , 松井 康子 , 伊賀 由美子 [他] , 小柳 綾子 , 吉岡 正人 日本化粧品技術者会誌 48(4), 287-295, 2014
ビルドアップ抑制効果を有する毛髪コンディショニング成分について
小柳 綾子 , 松井 康子 , 戸叶 隆雄 [他] , 吉岡 正人 日本化粧品技術者会誌 45(2), 122-127, 2011
O2-2 加水分解コムギの経皮感作による小麦依存性運動誘発アナフィラキシー8例 : 加水分解シルクへの反応性を含め(O2 小麦アレルギー1,口演,第61回日本アレルギー学会秋季学術大会)
岡田 里佳 , 猪又 直子 , 種子島 智彦 , 生長 奈緒子 , 白田 阿美子 , 野村 有希 , 池田 信昭 , 相原 道子 アレルギー 60(9-10), 1362, 2011
BIO PRODUCTS 加水分解シルク バイオインダストリー 26(12), 83-85, 2009-12
大谷 直子 , 小柳 綾子 , 植田 有香 [他] , 坂本 一民 , 吉岡 正人 日本化粧品技術者会誌 43(4), 247-253, 2009
小柳 綾子 , 後藤 信行 , 大海 須恵子 , 内田 咲子 , 林 奈津子 , 吉岡 正人 日本化粧品技術者会誌 41(4), 269-274, 2007
内田 咲子 , 植原 計一 , 吉岡 正人 日本化粧品技術者会誌 36(2), 102-110, 2002
BIO PRODUCTS 加水分解シルク バイオインダストリ- 15(2), 66-69, 1998-02
英語論文
Safety Assessment of Silk Protein Ingredients as Used in Cosmetics.
Johnson W Jr, Bergfeld WF, Belsito DV, Hill RA, Klaassen CD, Liebler DC, Marks JG Jr, Shank RC, Slaga TJ, Snyder PW, Gill LJ, Heldreth B.Int J Toxicol. 2020 Nov/Dec;39(3_suppl):127S-144S. doi: 10.1177/1091581820966953.PMID: 33203267 Review.
Protective effect of conditioner agents on hair treated with oxidative hair dye.
da Gama RM, França-Stefoni SA, Sá-Dias TC, Bedin V, Baby AR, Velasco MVR.J Cosmet Dermatol. 2018 Dec;17(6):1090-1095. doi: 10.1111/jocd.12484. Epub 2018 Jan 7.PMID: 29316174
Contact urticaria from protein hydrolysates in hair conditioners.
Niinimäki A, Niinimäki M, Mäkinen-Kiljunen S, Hannuksela M.Allergy. 1998 Nov;53(11):1078-82. doi: 10.1111/j.1398-9995.1998.tb03818.x.PMID: 9860241