表示名称成分詳細
ローズヒップ油
成分番号(JP number): 552761
- INCI
- (NOTHING)
- 定義(Description)
- 本品は、カニナバラ Rosa canina の果実から得られる脂肪油である。
- 日本の規制情報(Japanese regulation information)
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- 中文inci(CN/中国名称)
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- 中国の規制情報(Chinese regulation information)
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- 韓国inci(KR/ハングル/성분명)
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- CAS No.
- EC No.
- EUの規制情報(Restriction/Annex/Ref#)
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原料情報
ローズヒップ油 / (NOTHING)
ローズヒップ油とは
バラ科植物カニナバラ(学名:Rosa canina 英名:dog rose)の果実から得られる植物油(植物オイル)です。
特徴
カニナバラは多年生植物で、ヨーロッパから西アジアにかけて自生しています。
多年生植物とは、2年以上にわたって生育する植物の総称を指します。一年生植物、二年生植物以外のすべての高等植物を含みます。
多年生植物は、有性生殖を何回行うかによって、さらに「一回結実性」と「多回結実性」とに分けられます。
カニナバラは色バラの原種のひとつであると考えられています。
楕円形で緋紅色の実は、本当の果実ではありません。花の基部が膨らんだ偽果(ぎか)です。
バラ科ではさまざまな偽果が見られます。
カニナバラ果実油の脂肪酸組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化があります。
化学的性質
リノール酸が約45%、リノレン酸が約35%を占めています。
二重結合が2つ以上の不飽和脂肪酸(*)であるリノール酸およびリノレン酸の含有量がかなり高いです。
そのため酸化安定性はかなり低い(つまり、酸化しやすい)と考えられます。
また他の植物油脂と比較してリノレン酸の含有量がかなり高いことも特徴的です。
リノレン酸を多く含む油は乾燥性が速いため、皮膚の湿潤性の炎症の抑制、細胞組織の賦活化に有用であると考えられます(1)。
抗変異原性抗酸化抗発癌性が豊富なため、研究でDNA損傷に対して使用されています(2)。
DNAは、紫外線や化学物質などによって日常的に傷ついており、このようにDNAが傷つくことを「DNA損傷」といいます。損傷にはDNAの化学的な構造の変化やDNAの切断などがあります。
ローズヒップ果実から調製されたエタノール抽出物が、キイロショウジョウバエのSMARTテストでメタンスルホン酸エチル(EMS)の変異原性効果を低減するという報告もあります(3)。
カニナバラの注入には高い抗酸化活性を持っています(4)。
この抗酸化活性がフェノール化合物、カロテノイド、およびアスコルビン酸の量に関係しているという報告もあります(5)。
(*)脂肪酸には骨格となる炭素がすべて飽和結合で満たされた「飽和脂肪酸」と、一部に二重結合(不飽和結合)を持つ「不飽和脂肪酸」があります。
さらに不飽和脂肪酸の中でも二重結合を1個だけ持つものを一価不飽和脂肪酸、2個以上持つものを多価不飽和脂肪酸と呼びます。
脂肪酸のうちエネルギー源になるのは、第一に飽和脂肪酸、次に一価不飽和脂肪酸です。
飽和脂肪酸が貯蔵脂肪として使われる重要な意味は、化学的に安定した物質であるからです。
これに比べて多価不飽和脂肪酸は化学的に不安定で、過酸化物質をつくりやすく、貯蔵に向いているとはいえません。
リノール酸やα-リノレン酸などの多価不飽和脂肪酸は、細胞膜を構成するリン脂質の一部であり、細胞から出るシグナル物質、プロスタグランジンなどの生理活性物質の材料として使われます。
不飽和脂肪酸のリノール酸やα-リノレン酸は体内合成できず、食事から摂取する必要があります。
そのため必須脂肪酸と呼ばれます。
とくにリノール酸はLDLを減らし心臓病を予防するといわれましたが、リノール酸は普通に食事を摂っていれば、必要量は簡単に摂取できます。
ヨウ素価について
ヨウ素価は、油脂の性状を示す重要な特性のひとつで、油脂を構成する脂肪酸の不飽和度を示すものです。
ヨウ素価が高いと、不飽和脂肪酸の含量が多く、酸化を受けやすいことになります。一方でヨウ素価が低いと飽和脂肪酸の含量が多く、酸化に対して安定性が高いことを示します。
ヨウ素価:170-190
ヨウ素価による分類:乾性油
ローズヒップ油のヨウ素価は、一例として上記のように記載されています(1)。
130以上の乾性油のため、乾燥性が高いと考えられます。
乾油性とは、皮膜状に空気中に放置すると、固化して弾性のある乾燥皮膜を生じるオイルのことです。
たとえば油性塗料に用いることで塗料の乾きが早くなります。
用途
北ヨーロッパでは古くから乾燥させたローズヒップの果実をハーブティーにして愛飲されています。
日本でもビタミンC補給などを目的に利用されています(7)。
リノール酸約45%、リノレン酸約35%を含有しており、リノール酸およびリノレン酸の割合がかなり高いです。
そのため、肌なじみおよび伸びに優れ、ベタつきのないサラッとした軽い使用感を付与することからスキンケア化粧品やヘアケア製品エモリエント剤として使用されています(1)(6)。
また化粧膜を強く密着させる効果に優れているため、口紅などのメイクアップ化粧品にも使用されています(8)。
参考文献
(1)広田 博(1997)「乾性油」化粧品用油脂の科学,11-15.
(2)Roman, I., Stanila, A. and Stanila, S. 2013. Bioactive compounds and antioxidant activity of Rosa canina L. biotypes from spontane- ous flora of Transylvania. Chem. Cent. J. 7: 73.
(3)Kizilet, H., Kasimoglu, C. and Uysal, H. 2013. Can the Rosa canina plant be used against alkylating agents as a radical scavenger. Pol. J. Environ. Stud. 22: 1263–1267.
(4)Campanella, L., Bonanni, A. and Tomassetti, M. 2003. Determination of the antioxidant capacity of samples of different types of tea, or beverages used on tea or other herbal products, using a superoxide dismutase biosensor. J. Pharm. Biomed. Anal. 32: 725–736.
(5)Gao, X., Bjork, L., Trajkovski, V. and Uggla, M. 2000. Evaluation of antioxidant activities of rosehip ethanol extracts in different test systems. J. Sci. Food Agric. 80: 2021–2027.
(6)日光ケミカルズ株式会社(2016)「油脂」パーソナルケアハンドブックⅠ,18-19.
(7)鈴木 洋(2011)「ローズヒップ(Rose hip)」カラー版健康食品・サプリメントの事典,203-204.
(8)宇山 侊男, 他(2015)「ローズヒップ油」化粧品成分ガイド 第6版,82.
ローズヒップ油の配合目的
- エモリント作用
- 感触改良
ローズヒップ油の安全性情報
https://online.personalcarecouncil.org/ctfa-static/online/lists/cir-pdfs/PRS577.pdf
日本語論文
健食イキイキまんぽ 天然ビタミンCの宝庫:肌を真からきれいにするローズヒップ
Food style 21 7(10), 33-39, 2003-10
ローズヒップエキスのヒト体脂肪低減作用 : 健康長寿社会に向けた研究から (特集 元気な高齢者になろう)
長友 暁史 , 西田 典永
Food style 21 17(4), 67-70, 2013-04
健康食品と医薬品の相互作用(5):ローズヒップエキスの連続投与がニフェジピンの体内動態に及ぼす影響
長友 暁史 , 西田 典永 , 小崎 敏雄 , 西村 亜佐子 , 成橋 和正 , 大西 憲明 , 芝田 信人 日本トキシコロジー学会学術年会 37(0), 411-411, 2010
梶本 五郎 , 村上 智嘉子 日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science 52(4), 209-218, 1999-08-10
英語論文
A systematic review on the Rosa canina effect and efficacy profiles.
Chrubasik C, Roufogalis BD, Müller-Ladner U, Chrubasik S.Phytother Res. 2008 Jun;22(6):725-33. doi: 10.1002/ptr.2400.PMID: 18384191 Review.
Phytochemistry, Traditional Uses and Pharmacological Profile of Rose Hip: A Review.
Ayati Z, Amiri MS, Ramezani M, Delshad E, Sahebkar A, Emami SA.Curr Pharm Des. 2018;24(35):4101-4124. doi: 10.2174/1381612824666181010151849.PMID: 30317989 Review.
Sadeghi H, Hosseinzadeh S, Akbartabar Touri M, Ghavamzadeh M, Jafari Barmak M, Sayahi M, Sadeghi H.Avicenna J Phytomed. 2016 Mar-Apr;6(2):181-8.PMID: 27222831 Free PMC article.
Grajzer M, Prescha A, Korzonek K, Wojakowska A, Dziadas M, Kulma A, Grajeta H.Food Chem. 2015 Dec 1;188:459-66. doi: 10.1016/j.foodchem.2015.05.034. Epub 2015 May 8.PMID: 26041218
Allergic contact dermatitis caused by "Rosa mosqueta" oil.
Ochando-Ibernón G, Schneller-Pavelescu L, Silvestre-Salvador JF.Contact Dermatitis. 2018 Oct;79(4):259-260. doi: 10.1111/cod.13083. Epub 2018 Jul 19.PMID: 30022513 No abstract available.
Javanmard M, Asadi-Gharneh HA, Nikneshan P.Nat Prod Res. 2018 Jul;32(14):1738-1743. doi: 10.1080/14786419.2017.1396591. Epub 2017 Nov 14.PMID: 29137491
Nutrient composition of rose (Rosa canina L.) seed and oils.
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Fromm M, Bayha S, Kammerer DR, Carle R.J Agric Food Chem. 2012 Oct 31;60(43):10733-42. doi: 10.1021/jf3028446. Epub 2012 Oct 22.PMID: 23020156