表示名称成分詳細
リン酸
成分番号(JP number): 552722
- INCI
- PHOSPHORIC ACID
- 定義(Description)
- 本品は、次の化学式で表される無機酸である。Orthophosphoric acid
- 日本の規制情報(Japanese regulation information)
- 中文inci(CN/中国名称)
- 磷酸
- 中国の規制情報(Chinese regulation information)
- 【已使用化妆品原料目录(2021年版)】Maximum Historical Usage in Rinse-off Cosmetics(%): 2.55, Maximum Historical Usage in Leave-on Cosmetics(%): 0.6
- 韓国inci(KR/ハングル/성분명)
- 포스포릭애씨드
- CAS No.
- 297-99-4
- EC No.
- -
- EUの規制情報(Restriction/Annex/Ref#)
II/1013
原料情報
リン酸 / PHOSPHORIC ACID
リン酸とは
リン酸とは
リン酸は、十酸化四リンが加水分解を受けて生ずる種々のオキソ酸の総称です(1)。
オキソ酸とは、中心原子に結合している原子が全て酸素原子であって、酸素原子の一部または全部に水素が結合し、その水素が水溶液中で水素イオンを生じて酸の性質をあらわす無機塩のことを示します(2)。
リン酸は、無色の単斜晶系結晶で、融点が42.35度、潮解性を有します。水によく溶け、エタノールにもよく溶けます。
リン酸は、常温ではきわめて安定な物質ですが、温度を上げていくと脱水縮合して、縮合リン酸となります。さらに高温になると、金属や金属酸化物とも反応します。
この縮合リン酸塩は、様々な個体を酸化、あるいは還元して可溶化させる時の媒体に使われます。主な用途としては金属の表面処理、食品添加物、染色処理などがあり、人体に対しては、粘膜などを強く刺激する毒性があるので注意が必要です。
リン酸の生体においての働きは、タンパク質や脂質などと結合したエステルやカルシウム塩などの形で、物質代謝や細胞内pH調整、またエネルギー伝達物質であるATP(アデノシン三リン酸)の構造の一部として、ヒトのエネルギー生産に非常に大きく関与しています。
このことから食品分野におけるリン酸の用途として、pHの調整目的で、酸味料のひとつとして清涼飲料水などの醸造に用いられています(3)。
また医薬品分野におけるリン酸の用途として、安定・安定化、滑沢、緩衝、懸濁・懸濁化、等張化、保存、pH調節、溶解・溶解補助目的の医薬品添加剤として経口剤、各種注射、外用剤、眼科用剤、口中用剤などの幅広い製品に様々な用途で用いられています。
リン酸の効果
リン酸は、酸性を示す無機酸であることから、製品自体のpH調整や製品に化粧品原料を配合する際に中和するpH調整剤として使用されています(4)(5)。
この理由としては、多くの化粧品製剤において、pHが変動してしまうと効果を発揮しなくなる成分や品質の安定性が保てなくなる成分などが含まれていることが多いためです。
pHとは、水素イオン指数ともいい、水溶液中の水素イオン濃度を表す指数です。0-14までの数値で表され、7を中性とし、7より低いとき酸性を示し、数値が低くなるほど強酸性を意味し、また7より大きいときアルカリ性を示し、数値が高くなるほど強アルカリ性を意味します(6)(7)。
皮膚表面を薄く覆っている皮表脂質膜(皮脂膜)のpHは、皮表脂質膜は皮脂の中に存在する遊離脂肪酸や汗に含まれている乳酸やアミノ酸の影響によって、pH4.5-6.0の弱酸性を示し、一般にこの範囲であれば正常であると考えられています。
一方でpHが4.5-6.0の範囲から離れるほど肌への刺激が強くなっていくことが知られています(7)。
リン酸が用いられている製品について、2015から2016年の海外での調査結果では、皮膚接触、毛髪、粘膜への用途として、洗浄系製品であるリンスオフ製品に多く使用されていることが確認されました。
参考文献
- 「リン酸」岩波 理化学辞典 第5版, p1479
- 「オキソ酸」岩波 理化学辞典 第5版, p186
- 二井 將光(2017)「エネルギー通貨ATPとは」生命を支えるATPエネルギー メカニズムから医療への応用まで,32-39.
- 日本化粧品工業連合会(2013)「リン酸」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,1084.
- 日光ケミカルズ株式会社(1977)「無機薬品」ハンドブック – 化粧品・製剤原料 – 改訂版,809-818.
- 大木 道則, 他(1989)「pH」化学大辞典,1834.
- 朝田 康夫(2002)「皮膚とpHの関係」美容皮膚科学事典,54-56.
リン酸の配合目的
- 酸性によるpH調整・PH緩衝
リン酸の安全性情報
https://online.personalcarecouncil.org/ctfa-static/online/lists/cir-pdfs/PRS710.pdf
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