表示名称成分詳細
ミリスチン酸K
成分番号(JP number): 552378
- INCI
- POTASSIUM MYRISTATE
- 定義(Description)
- 本品は、ミリスチン酸(*)のカリウム塩であり、次の化学式で表される。Potassium myristate
- 日本の規制情報(Japanese regulation information)
- 中文inci(CN/中国名称)
- 肉豆蔻酸钾
- 中国の規制情報(Chinese regulation information)
- 【已使用化妆品原料目录(2021年版)】Maximum Historical Usage in Rinse-off Cosmetics(%): 28, Maximum Historical Usage in Leave-on Cosmetics(%): 1
- 韓国inci(KR/ハングル/성분명)
- 포타슘미리스테이트
- CAS No.
- 13429-27-1
- EC No.
- 236-550-5
- EUの規制情報(Restriction/Annex/Ref#)
-
原料情報
ミリスチン酸K / POTASSIUM MYRISTATE
ミリスチン酸Kとは
[化粧品成分表示名称]
・ミリスチン酸K
[医薬部外品表示名称]
・ミリスチン酸カリウム
・カリウム石けん用素地
ミリスチン酸K(Potassium Myristate)は、炭素数14の高級脂肪酸であるミリスチン酸のカリウム塩(高級脂肪酸アルカリ金属塩)です。一般に「石けん(セッケン)」と呼ばれる成分に分類される、陰イオン界面活性剤(アニオン界面活性剤)です。
石けんの製法には「けん化法」と「中和法」の2種類があります。ミリスチン酸Kは、高級脂肪酸であるミリスチン酸を、水酸化カリウムのアルカリ溶液で中和する中和法で調製することが出来ます。
ミリスチン酸Kを天然由来の油脂からけん化法で調製する場合、ミリスチン酸を含むトリグリセリドであるヤシ油やパーム核油などの油脂を、水酸化カリウムのアルカリ溶液でけん化して調製します。天然由来の油脂にはアルキル鎖長や不飽和度の異なるさまざまな脂肪酸が含まれているため、ミリスチン酸K以外にもいくつかの脂肪酸カリウム塩やグリセリンなどが副生されることになります。
高級脂肪酸または油脂を水酸化カリウムと反応させて得られる成分は、総称して「カリ石ケン素地」と呼ばれ、ペースト状で柔らかい性質のため、主に液体石けんやシャンプーなどの洗浄剤に用いられます(1)。
石けんは、そのアルキル鎖長や不飽和度によって、界面での挙動がそれぞれ異なりますが、ミリスチン酸塩はラウリン酸塩よりは水溶性が劣るものの、泡はキメが細かく持続性が良いという特徴があります。
界面活性剤としてのミリスチン酸K
親水基としてカルボン酸塩を含んでいるミリスチン酸Kは、陰イオン界面活性剤(アニオン界面活性剤)に分類されます。
アニオン界面活性剤は、一般に起泡性・浸透力・分散力に優れているという特徴があります。油への溶解性は低いため、一般にはノニオン界面活性剤よりも乳化力が劣りますが、泥汚れなどの洗浄力が高いことが知られています(2)。
ミリスチン酸Kのようにアニオン界面活性剤の中でも特に石けんに分類されるものは、その起泡性や洗浄力の高さから、身体洗浄料、洗顔料、衣料用洗剤、ハウスホールド用の洗剤の基剤として古くから用いられてきました。また石けんには、黄色ブドウ球菌などのグラム陽性球菌に対する殺菌性を示すことも知られています(2)。
石けんは毒性も低く、気泡性や乳化安定性に優れていますが、いくつかの欠点があります。石けんは、pH の低い領域ではカルボン酸が -COOH の酸型の状態となるため、界面活性剤として働くことが出来ません。また、カルシウムなどの塩類を含む硬水中では、水にほとんど溶けないカルシウム石けんなどの金属石けんが生成、沈殿するため、気泡性・乳化性が低下します(2)。
ミリスチン酸Kの化粧品への配合
ミリスチン酸カリウム塩の石けんであるミリスチン酸Kは、ラウリン酸塩に次いで水溶性が高く、気泡性に優れているという特徴があることから、主に石けんや洗顔フォーム、シャンプーなどに配合されています(3)。また、乳化剤としての働きがあることも知られています(4)。
その他の石けんと比べて分子量の小さいミリスチン酸Kやラウリン酸Kは、皮脂だけでなく角質細胞の間にある細胞間脂質(コレステロール)まで洗い落としてしまい、比較的皮膚刺激が強いとされているため、敏感肌の方は注意が必要です。
Cosmetic Ingredient Reviewでは、さまざまな安全試験データから、安全性評価論文内で説明されている現在の使用方法と濃度内で、非刺激性および非感作性になるように処方された場合のミリスチン酸Kの安全性が結論づけられています(4)。
アメリカ食品医薬品局(FDA)が実施する化粧品自主登録プログラム(VCRP)によると、2007年時点で、ミリスチン酸Kを配合している製品の登録数は合計27で、主に洗顔料や身体洗浄剤などに使用されていました(4)。
製品への含有量について米国化粧品工業会(現パーソナルケア製品評議会)が2006年に実施した調査によると、ミリスチン酸Kは5%から7%の配合率で使用されていました(4)。
参考文献
- 鈴木一成 (2008)「石ケン素地」化粧品成分用語事典2008, 407
- 野々村美宗 (2015)「アニオン界面活性剤」化粧品医薬部外品医薬品のための界面化学, 43-48
- 宇山光男, 他 (2015)「高級脂肪酸アルカリ金属塩」化粧品成分ガイド 第6版, 133
- Cosmetic Ingredient Review (2010)「Final Report of the Amended Safety Assessment of Myristic Acid and Its Salts and Esters as Used in Cosmetics」 International Journal of Toxicology 29 (Supplement 3), 162S-186S
ミリスチン酸Kの配合目的
- 洗浄剤
- 乳化剤
ミリスチン酸Kの安全性情報
https://online.personalcarecouncil.org/ctfa-static/online/lists/cir-pdfs/PRS504.pdf
日本語論文
低濃度の脂肪酸からなるペースト状洗顔料の処方設計とその有用性
田中 一平 , 林 絵美子 , Cynthia Qi , 堀越 俊雄
日本化粧品技術者会誌 54(1), 42-47, 2020
濱石 貴士 , 森永 賀亮 , 森田 洋
日本調理科学会大会研究発表要旨集 29(0), 81, 2017
濱石 貴士 , 森永 賀亮 , 森田 洋
日本調理科学会大会研究発表要旨集 28(0), 144, 2016
惠良 真理子 , 森永 賀亮 , 森田 洋
日本調理科学会大会研究発表要旨集 27(0), 88, 2015
森永 賀亮 , 森田 洋
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 66(0), 59, 2014
境 志穂 , 惠良 真理子 , 森田 洋
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 66(0), 169, 2014
脂肪酸塩の<I>Cladosporium cladosporioides</I>に対する抗カビ効果
鷲巣 孝 , 森田 洋
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 64(0), 116, 2012
英語論文
Application of Potassium Myristate as an Antifungal and a Dough Improving in Bread-Making.
Hamaishi T, et al. Biocontrol Sci. 2018. PMID: 30584209 Free article.