表示名称成分詳細
パルミチン酸
成分番号(JP number): 552033
- INCI
- PALMITIC ACID
- 定義(Description)
- 本品は、次の化学式で表される脂肪酸である。Hexadecanoic acid
- 日本の規制情報(Japanese regulation information)
- 中文inci(CN/中国名称)
- 棕榈酸
- 中国の規制情報(Chinese regulation information)
- 【已使用化妆品原料目录(2021年版)】Maximum Historical Usage in Rinse-off Cosmetics(%): 22, Maximum Historical Usage in Leave-on Cosmetics(%): 9
- 韓国inci(KR/ハングル/성분명)
- 팔미틱애씨드
- CAS No.
- 57-10-3
- EC No.
- 200-312-9
- EUの規制情報(Restriction/Annex/Ref#)
-
原料情報
パルミチン酸 / PALMITIC ACID
パルミチン酸とは
パルミチン酸とは、主にパーム油から得られる、化学構造的に炭素数:二重結合数がC16:0で構成された分子量256.42の高級脂肪酸(飽和脂肪酸)です(1)。
パルミチン酸は高級脂肪酸であることから中和法が用いられ、また中和に用いるアルカリを水酸化Naにすることでナトリウムセッケン(固形石鹸)が得られます(4)。
化学構造的に二重結合(不飽和結合)の数が多いほど酸化安定性が低くなりますが、パルミチン酸は化学構造的にすべて単結合(飽和結合)で構成された飽和脂肪酸であり、酸化安定性の高い脂肪酸です(3)。
パルミチン酸が化粧品に配合される場合は、以下のような配合目的があります。
ナトリウムセッケン合成による洗浄・起泡
中和法によって合成されるセッケンを「高級脂肪酸Na」と表記しますが、中和法で得られるパルミチン酸のナトリウムセッケンが化粧品成分表示一覧に記載される場合は、以下のように、 ・パルミチン酸、水酸化Na ・パルミチン酸Na ・石ケン素地 これら3つのいずれかの記載方法で記載されるため、セッケン(洗浄基剤)目的で「パルミチン酸」が化粧品成分表示一覧に記載されている場合は、水酸化Naが一緒に記載されます。
次にパルミチン酸を使用したナトリウムセッケンの洗浄力および起泡力については、パルミチン酸など炭素数の多い脂肪酸は70-80℃の温度条件で洗浄力が最大化しますが、温度が低下するにつれて水に対する溶解度が低下しそれにともない洗浄力が低下するため(6)、実際にすすぎに使用する38℃付近ではラウリン酸やミリスチン酸と比較すると洗浄力が低くなることが知られています。
カリウムセッケン合成による起泡・選択洗浄
カリウムセッケンによる起泡・選択洗浄に関しては、カリウムセッケンはナトリウムセッケンより溶解性が高く、起泡性に優れていることが知られています(5)。
セッケン合成による乳化
セッケンは、様々な油性成分を乳化し、またO/Wエマルションを生成するための乳化剤として優れており、さらにセッケン乳化によって生成したエマルションは安定性が高く、ある程度の硬度をもちながらさっぱりした感触を付与するという特徴から、非イオン界面活性剤が発達した今日でもある程度の硬度とさっぱりした感触を目的に使用されています(7)。
ただし、セッケンを乳化剤としたエマルションは温度によって硬度が変化しやすく、また経日変化が大きいことから、セッケンの欠点を補うために非イオン界面活性剤と併用する処方が用いられていることが多いです(7)。
セッケン乳化に用いられるセッケンはステアリン酸セッケンが多いですが、乳化系スキンケア化粧品ではパルミチン酸セッケンが使用されることもあります。
乳化物の感触改良
乳化物の感触改良に関しては、クリームの伸びや硬さなど質感を調整するベース成分として非常に重要な成分であり、クリーム、乳液、ファンデーションなど乳化物に使用されています。
これらの目的で、洗顔料&洗顔石鹸、ボディ&ハンドソープ製品、メイクアップ化粧品、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品など様々な製品になどに使用されます(2)。
参考文献
- “Pubchem”(2019)「Palmitic acid」,
- https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Palmitic-acid 2019年10月8日アクセス.
- 日光ケミカルズ株式会社(2016)「脂肪酸および有機酸」パーソナルケアハンドブックⅠ,33.
- 広田 博(1997)「脂肪酸の組成と分類」化粧品用油脂の科学,60-64.
- 宮澤 清(1993)「化粧せっけん及びヘアシャンプーの泡立ちとソフト感」油化学(42)(10),768-774.
- 酒井 裕二(1999)「理想的な洗顏料の開発」日本化粧品技術者会誌(33)(2),109-118.
- 中垣 正幸(1965)「界面化学 (応用篇). IV.」油化学(14)(2),72-78.
パルミチン酸の配合目的
- ナトリウムセッケン合成による起泡・洗浄
- カリウムセッケン合成による起泡・選択洗浄
- セッケン合成による乳化
- 乳化
パルミチン酸の安全性情報
https://online.personalcarecouncil.org/ctfa-static/online/lists/cir-pdfs/FR777.pdf
https://online.personalcarecouncil.org/ctfa-static/online/lists/cir-pdfs/PRNS513.pdf
https://online.personalcarecouncil.org/ctfa-static/online/lists/cir-pdfs/pr161.pdf
日本語論文
パルミチン酸デキストリンと流動パラフィンの2成分系オルガノゲルの構造解析
坂 貞徳 , 佐藤 眞直 , 太田 昇 , 李 雷 , 中田 悟 日本化粧品技術者会誌 50(3), 194-200, 2016 J-STAGE
第二世代プロビタミンC--アスコルビン酸-2-リン酸パルミチン酸ナトリウムの皮膚生理機能と化粧品への応用 (特集 ビタミン類の新機能と化粧品への応用)
加藤 詠子 , 続木 敏 , 三羽 信
比古フレグランスジャーナル 32(2), 55-60, 2004-02
化粧品中のビタミンB_6ジカプリル酸およびジパルミチン酸エステルの定量
野沢 昭男 [他] , 関根 達也 ビタミン 47(2), 97-103, 1973 J-STAGE 医中誌Web
炭素数の異なるデキストリン脂肪酸エステルを添加した油剤の発泡性
櫻井 正利 , 富本 実知代 , 加藤 貞二 [他] , 鈴木 昇 色材協會誌 76(3), 93-96, 2003-03-20 J-STAGE 参考文献6件
藤野 安彦 , 中野 益男 , 大西 正男 帯広畜産大学学術研究報告 第1部 10(3), p769-778, 1977-11 機関リポジトリ
ATR/FT‐IRによる油性物質の迅速分析 人体から繊維製品に付着した汚れへの応用:―人体から繊維製品に付着した汚れへの応用―
常定 健 , 川野 道則 , 光石 一太 , 久保川 博夫 繊維製品消費科学 43(2), 130-139, 2002 J-STAGE
英語論文
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