表示名称成分詳細
パーム油
成分番号(JP number): 551998
- INCI
- ELAEIS GUINEENSIS OIL
- 定義(Description)
- 本品は、アブラヤシ Elaeis guineensis の果肉から得られる脂肪油である。Elaeis Guineensis Oil is a natural oil obtained from the fruits of the Palmoil Tree, Elaeis guineensis, Palmaceae
- 日本の規制情報(Japanese regulation information)
- 中文inci(CN/中国名称)
- 油棕(ELAEIS GUINEENSIS)油
- 中国の規制情報(Chinese regulation information)
- 【已使用化妆品原料目录(2021年版)】Maximum Historical Usage in Rinse-off Cosmetics(%): (none), Maximum Historical Usage in Leave-on Cosmetics(%): 75.2
- 韓国inci(KR/ハングル/성분명)
- 오일팜오일
- CAS No.
- 8002-75-3
- EC No.
- 232-316-1
- EUの規制情報(Restriction/Annex/Ref#)
-
原料情報
パーム油 / ELAEIS GUINEENSIS OIL
パーム油とは
パーム油とは、ヤシ科植物ギニアアブラヤシ(学名:Elaeis guineensis 英名:palm)の果肉から得られる植物油脂です。
ギニアアブラヤシは、アンゴラやガンビア周辺の西アフリカを原産とし、古くから中部アフリカの熱帯雨林地帯でその果実から得られる油脂を目的に広く栽培されています。
単位面積当たりから得られる油脂の量は植物中屈指であり、今日ではマレーシア、ナイジェリアおよびインドネシアなどで大規模栽培されており、収穫された果実は、石鹸や食用植物油の生産に使われています。
パーム油の脂肪酸組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、オレイン酸(不飽和脂肪酸)(C18:1)が40.7%、リノール酸(不飽和脂肪酸)(C18:2)が9.7%、ラウリン酸(飽和脂肪酸)(C12:0)が0.2%、ミリスチン酸(飽和脂肪酸)(C14:0)が1.1%、パルミチン酸(飽和脂肪酸)(C16:0)が43.1%、ステアリン酸(飽和脂肪酸)(C18:0)が4.5%というような種類と比率で構成されています(1)。
パルミチン酸含有量が多いのが特徴で、パルミチン酸が約43%、オレイン酸が約40%を占めており、パルミチン酸は飽和脂肪酸で二重結合が0であり、またオレイン酸は二重結合が1つの不飽和脂肪酸であるため、酸化安定性は高いと考えられます。
不鹸化物(∗1)は、トコフェロールおよびトコトリエノールなどが含まれています(2)。
ヨウ素価は100以下の不乾性油のため、乾燥性はほとんどなく、融点は27-50℃であるため、日本においては、冬など27℃以下の気温では固体ですが、夏など27℃を超えてくると液体化し始めます。
化粧品に配合される場合の配合目的は、以下です。
・ナトリウムセッケン合成による起泡・洗浄
セッケン(洗浄基剤)目的で「パーム油」が化粧品成分表示一覧に記載されている場合は、水酸化Naが一緒に記載されます。
次にパーム油を使用したナトリウムセッケンの洗浄力および起泡力についてですが、パーム油の脂肪酸組成の比率は、一例としてパルミチン酸43%、オレイン酸40%を主体とした構成となっており、パーム油の脂肪酸組成は、冷水および温水の両方で比較的安定した洗浄力を有しますが、起泡力はかなり低いことが知られています(4)。
ただし、市販の洗浄製品は複数の植物油脂を混合したナトリウムセッケンが使用されていることから、配合されているナトリウムセッケンの総合的な洗浄力、起泡性および泡持続性を示します(5)。
・カリウムセッケン合成による起泡・選択洗浄
カリウムセッケンは主に洗顔料に使用されますが、洗顔の場合、過剰な皮脂や汚れを洗浄することが必要である一方で、皮膚の恒常性を保持するための角質細胞間脂質などまで洗い流してしまうことは望ましいことではありません。
このような背景から、洗顔において皮膚のつっぱり感や肌荒れを回避するために、皮膚の恒常性に必要な物質を極力洗い流さない選択洗浄性(∗4)が重要であり、顔におけるカリウムセッケンの選択洗浄性とは、皮膚の向上性を保つために重要な因子である角層細胞由来脂質であるコレステロールおよびコレステロールエステルを残存させ(∗5)、皮脂由来脂質であるスクワレンを汚れとともに洗浄することを意味します。
∗4 選択洗浄性とは、ある物質はよく洗い流すが、ある物質は洗い流さず残すという洗浄剤の性質のことです。
∗5 角質細胞間脂質であるコレステロールおよびコレステロールエステルの残存は皮膚の乾燥や肌荒れを防ぐための重要な因子であると考えられています。
・感触改良
感触改良に関しては、油性基剤の硬さと粘性を調節する目的でスキンケア化粧品、ボディケア製品、メイクアップ化粧品などに使用されています。
感触改良剤としてパーム核油および水添パーム油と併用して用いられることがあり、これらが記載されている場合は感触改良目的である可能性が考えられます。
これらの目的で、固形石鹸、洗顔石鹸&洗顔料、洗浄製品、スキンケア化粧品、ボディケア製品、メイクアップ化粧品などに使用されます(3)。
参考文献
(1) 日本油化学協会(1990)「植物油脂の脂肪酸組成」油脂化学便覧 改訂3版,104-110.
(2) 加藤 秋男(1983)「油脂成分及びその工業的利用に関する研究」油化学(32)(11),659-665.
(3) 田村 健夫, 他(1990)「アニオン界面活性剤」香粧品科学 理論と実際 第4版,133-136.
(4) 田村 健夫, 他(1990)「石けん」香粧品科学 理論と実際 第4版,336-348.
(5) 宮澤 清(1993)「化粧せっけん及びヘアシャンプーの泡立ちとソフト感」油化学(42)(10),768-774.
パーム油の配合目的
・ナトリウムセッケン合成による起泡・洗浄
・カリウムセッケン合成による起泡・選択洗浄
・感触改良
パーム油の安全性情報
・https://online.personalcarecouncil.org/ctfa-static/online/lists/cir-pdfs/PRS577.pdf
・https://online.personalcarecouncil.org/ctfa-static/online/lists/cir-pdfs/pr267.pdf
日本語論文
小井川 広志 コスメトロジー研究報告 28, 191-198, 2020
パーム油ってな~に? : 企業の原材料調達 (特集 化粧品とエコ : キレイに生きる) -- (エコでキレイ、そしてヘルシーなくらしをしたいあなたへ)
南 明紀子 循環とくらし (6), 34-37, 2015-11
英語論文
Yusof NZ, Abd Gani SS, Azizul Hasan ZA, Idris Z.Int J Toxicol. 2018 Jul/Aug;37(4):335-343. doi: 10.1177/1091581818773979. Epub 2018 May 7.PMID: 29734825
The empiric use of palm kernel oil in neonatal skin care: justifiable or not?
Chiabi A, Kenmogne MH, Nguefack S, Obadeyi B, Mah E, Meka FZ, Tchokoteu PF, Mbonda E, Ekoe T.Chin J Integr Med. 2011 Dec;17(12):950-4. doi: 10.1007/s11655-011-0938-1. Epub 2011 Dec 3.PMID: 22139548 Review.
Wound healing activity of Elaeis guineensis leaf extract ointment.
Sasidharan S, Logeswaran S, Latha LY.Int J Mol Sci. 2012;13(1):336-47. doi: 10.3390/ijms13010336. Epub 2011 Dec 28.PMID: 22312255 Free PMC article.
A review of ethnomedicinal uses of shea butter for dermatoses in Sub-Saharan Africa.
Ugwu-Dike P, Nambudiri VE.Dermatol Ther. 2021 Jan 21:e14786. doi: 10.1111/dth.14786. Online ahead of print.PMID: 33480103
Evaluation of the allergenicity of tropical pollen and airborne spores in Singapore.
Chew FT, Lim SH, Shang HS, Dahlia MD, Goh DY, Lee BW, Tan HT, Tan TK.Allergy. 2000 Apr;55(4):340-7. doi: 10.1034/j.1398-9995.2000.00308.x.PMID: 10782518
Identification of a 7S globulin as a novel coconut allergen.
Benito C, González-Mancebo E, de Durana MD, Tolón RM, Fernández-Rivas M.Ann Allergy Asthma Immunol. 2007 Jun;98(6):580-4. doi: 10.1016/s1081-1206(10)60739-9.PMID: 17601273
Baratawidjaja IR, Baratawidjaja PP, Darwis A, Soo-Hwee L, Fook-Tim C, Bee-Wah L, Baratawidjaja KG.Asian Pac J Allergy Immunol. 1999 Mar;17(1):9-12.PMID: 10403003