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表示名称成分詳細

ステアリン酸K

成分番号(JP number): 551496

INCI
POTASSIUM STEARATE
定義(Description)
本品は、ステアリン酸(*)のカリウム塩であり、次の化学式で表される。Potassium stearate
日本の規制情報(Japanese regulation information)
中文inci(CN/中国名称)
硬脂酸钾
中国の規制情報(Chinese regulation information)
【已使用化妆品原料目录(2021年版)】Maximum Historical Usage in Rinse-off Cosmetics(%): 23, Maximum Historical Usage in Leave-on Cosmetics(%): 0.798
韓国inci(KR/ハングル/성분명)
포타슘스테아레이트
CAS No.
593-29-3
EC No.
209-786-1
EUの規制情報(Restriction/Annex/Ref#)

-

原料情報

ステアリン酸K / POTASSIUM STEARATE

ステアリン酸Kとは

[化粧品成分表示名称]

・ステアリン酸K

[医薬部外品表示名称]

・ステアリン酸カリウム

・カリウム石けん用素地

ステアリン酸K(Potassium Stearate)は、炭素数18の高級脂肪酸であるステアリン酸のカリウム塩(高級脂肪酸アルカリ金属塩)です。一般に「石けん(セッケン)」と呼ばれる成分に分類される、陰イオン界面活性剤(アニオン界面活性剤)です。

石けんの製法には「けん化法」と「中和法」の2種類があります。ステアリン酸Kは、高級脂肪酸であるステアリン酸を、水酸化カリウムのアルカリ溶液で中和する中和法で調製することが出来ます。

ステアリン酸Kを天然由来の油脂からけん化法で調製する場合、ステアリン酸を含むトリグリセリドであるパーム油やオリーブ油などの油脂を、水酸化カリウムのアルカリ溶液でけん化して調製します。天然由来の油脂にはアルキル鎖長や不飽和度の異なるさまざまな脂肪酸が含まれているため、ステアリン酸K以外にもいくつかの脂肪酸カリウム塩やグリセリンなどが副生されることになります。

高級脂肪酸または油脂を水酸化カリウムと反応させて得られる成分は、総称して「カリ石ケン素地」と呼ばれ、ペースト状で柔らかい性質のため、主に液体石けんやシャンプーなどの洗浄剤に用いられます(1)。

石けんは、そのアルキル鎖長や不飽和度によって、界面での挙動がそれぞれ異なります。ステアリン酸塩は水にはほとんど溶けないため洗浄力はあまり高くありませんが、油水界面で硬い界面膜を調製し、エマルションを安定化する効果が期待できます(2)。

界面活性剤としてのステアリン酸K

親水基としてカルボン酸塩を含んでいるステアリン酸Kは、陰イオン界面活性剤(アニオン界面活性剤)に分類されます。

アニオン界面活性剤は、一般に起泡性・浸透力・分散力に優れているという特徴があります。油への溶解性は低いため、一般にはノニオン界面活性剤よりも乳化力が劣りますが、泥汚れなどの洗浄力が高いことが知られています(2)。

ステアリン酸Kのようにアニオン界面活性剤の中でも特に石けんに分類されるものは、その起泡性や洗浄力の高さから、身体洗浄料、洗顔料、衣料用洗剤、ハウスホールド用の洗剤の基剤として古くから用いられてきました。また石けんには、黄色ブドウ球菌などのグラム陽性球菌に対する殺菌性を示すことも知られています(2)。

石けんは毒性も低く、気泡性や乳化安定性に優れていますが、いくつかの欠点があります。石けんは、pH の低い領域ではカルボン酸が -COOH の酸型の状態となるため、界面活性剤として働くことが出来ません。また、カルシウムなどの塩類を含む硬水中では、水にほとんど溶けないカルシウム石けんなどの金属石けんが生成、沈殿するため、気泡性・乳化性が低下します(2)。

ステアリン酸Kは冷水にはあまり溶けず、60度以上の水にはよく溶けます。60度以上の高温下では高い洗浄力を発揮します。

ステアリン酸Kの化粧品への配合

ステアリン酸塩は、分子量の小さいラウリン酸塩やミリスチン酸塩と異なり、細胞間脂質(コレステロール)を洗い流しまん。そのため皮膚刺激が弱いとされ、比較的肌に優しいという特徴があります。ステアリン酸はさまざまな天然油脂に含まれる脂肪酸のため、ステアリン酸Kは他の脂肪酸塩と共に石けんや洗顔フォーム、シャンプーなどの洗浄成分として使用されています(3)。

ステアリン酸塩は油水界面で硬い界面膜を調製し、エマルションを安定化する働きが期待されるため、乳化剤としてクリームや乳液にも使用されています(2)。

Cosmetic Ingredient Reviewでは、さまざまな安全試験データから、安全性評価論文内で説明されている現在の使用方法と濃度内で、非刺激性および非感作性になるように処方された場合のステアリン酸Kの安全性が結論づけられています(4)。

アメリカ食品医薬品局(FDA)が実施する化粧品自主登録プログラム(VCRP)によると、2019年時点で、ステアリン酸Kを配合している製品の登録数は合計157で、そのうちリーブオン製品は72製品、リンスオフ製品は85製品でした(4)。

製品への含有量について2016年にパーソナルケア製品評議会が実施した調査によると、ステアリン酸Kはリーブオン製品で0.0083%から7.5%、リンスオフ製品で0.0097%から45%の配合率で使用されていました(4)。

参考文献

  1. 鈴木一成 (2008)「石ケン素地」化粧品成分用語事典2008, 407
  2. 野々村美宗 (2015)「アニオン界面活性剤」化粧品医薬部外品医薬品のための界面化学, 43-48
  3. 宇山光男, 他 (2015)「高級脂肪酸アルカリ金属塩」化粧品成分ガイド 第6版, 133
  4. Cosmetic Ingredient Review (2019)「Safety Assessment of Fatty Acids & Fatty Acid Salts as Used in Cosmetics」Final Report

ステアリン酸Kの配合目的

  • 洗浄剤
  • 乳化剤

ステアリン酸Kの安全性情報

https://online.personalcarecouncil.org/ctfa-static/online/lists/cir-pdfs/FR777.pdf

https://online.personalcarecouncil.org/ctfa-static/online/lists/cir-pdfs/pr245.pdf

日本語論文

炭素鎖の異なる脂肪酸塩による小麦粉パンの生地改良効果

濱石 貴士 , 森永 賀亮 , 森田 洋

日本調理科学会大会研究発表要旨集 29(0), 81, 2017

ステアリン酸カリウム-水-多価アルコール系の相転移

友政 哲 , 春沢 文則 , 町田 靖彦

油化学 36(12), 938-942, 1987

ステアリン酸カリウム及フヱノールフタレイン)ニヨリ土類アルカリ鹽類ノ容量分析法(第二門)

衣笠

藥學雜誌 (321), 1174-1176, 1908-11-26

英語論文