ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2とは

[化粧品成分表示名称]

・ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2

[医薬部外品表示名称]

・ジイソステアリン酸ポリグリセリル

ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2（Polyglyceryl-2 Diisostearate）は、炭素数18の飽和分岐脂肪酸であるイソステアリン酸と、2個のグリセリンの重合体であるジグリセリンのジエステルです。ポリグリセリン脂肪酸エステル型の非イオン界面活性剤（ノニオン界面活性剤）に分類されます。

医薬部外品表示名称としては「ジイソステアリン酸ポリグリセリル」という名前が使われています。

界面活性剤としてのジイソステアリン酸ポリグリセリル-2

親水基としてポリグリセリンを含んでいるジイソステアリン酸ポリグリセリル-2は、非イオン界面活性剤（ノニオン界面活性剤）に分類されます。

ノニオン界面活性剤は、水中でイオン化しない親水基を持った界面活性剤です。酸性でもアルカリ性でも使用することができ、水の硬度の影響を受けにくいなど化学的に安定な性質があり、さまざまな界面活性剤と併用することができます。乳化作用・分散作用に優れており、幅広い分野で使用されています。

多価アルコール型のノニオン界面活性剤は、一般に天然由来で毒性も低いことから、化粧品・身体洗浄料だけでなく、食品や医療品の乳化・可溶化剤としても用いられています。曇天現象を起こさないため、幅広い温度領域で長期保存安定性を確保しやすいという特徴があります(1)。

ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2などのポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンの重合度や、脂肪酸の鎖長、エステル化度を変えることで、親水性-親油性バランス（HLB：Hydrophilic-Lipophilic Balance）を自由に調整することができます。分子構造の設計によって目的とする可溶化物や乳化物を得るための界面活性剤を調製することができるため、食品や化粧品用途で幅広く利用されています(2)。

また、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、水和力が強いために温度や塩、多価アルコール等の共存物質の影響を受けにくいという特性があり、さまざまな剤形に配合しやすいという利点があります(2)。

ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2の化粧品への配合

ノニオン界面活性剤に分類されるジイソステアリン酸ポリグリセリル-2は、主に乳化剤として使用されます。乳化剤とは、水と油のように、本来は互いに混じり合わない２種類以上の物質の境界面で働き、どちらか一方が細粒となり、他方の中に均一に分散した「エマルション（乳化物）」を生成する作用がある成分のことです。

エマルションの基本構造には、水の中に油滴が分散したO/W型（Oil in Water type）と、油の中に水滴が分散したW/O型（Water in Oil type）があります。HLBが3.2 – 5.5と報告されているジイソステアリン酸ポリグリセリル-2は(3,4,5,6)、親油性の傾向があり、W/O型のエマルションを生成しやすい乳化剤であると言えます。

ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2には、エモリエント剤としての作用も知られています(7)。

上記のような特性から、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2は、シャンプー、ボディソープなどの洗浄剤や洗顔料、スキンケア製品、ボディ・ハンドケア製品、メイクアップ化粧品など、さまざまな化粧品に使用されています。

Cosmetic Ingredient Reviewでは、さまざまな安全試験データから、安全性評価論文内で説明されている現在の使用方法と濃度内で処方された場合のジイソステアリン酸ポリグリセリル-2の安全性が結論づけられています(7)。

アメリカ食品医薬品局（FDA）が実施する化粧品自主登録プログラム（VCRP）によると、2015年時点で、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2を配合している製品の登録数は合計86で、そのうちリーブオン製品は84製品、リンスオフ製品は2製品でした(7)。

製品への含有量について2015年にパーソナルケア製品評議会が実施した調査によると、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2はリーブオン製品で0.1%から18.8%、リンスオフ製品で0.88%から5%の配合率で使用されていました(7)。

参考文献

1. 野々村美宗 (2015)「ノニオン界面活性剤」化粧品医薬部外品医薬品のための界面化学, 52-56
2. 樋口智則 (2019)「ポリグリセリン脂肪酸エステルの可溶化 ・ 乳化特性」オレオサイエンス 第 19 巻第 10 号, 405-410
3. 日本エマルジョン株式会社 (-)「EMALEX DISG-2」技術資料
4. 日本エマルジョン株式会社 (-)「EMALEX DISG-2EX」技術資料
5. 阪本薬品工業株式会社 (-)「Sフェイス IS-202P」技術資料
6. 日光ケミカルズ株式会社 (-)「NIKKOL DGMIS」技術資料
7. Cosmetic Ingredient Review (2016)「Safety Assessment of Polyglyceryl Fatty Acid Esters as Used in Cosmetics」Final Report

ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2の配合目的

• 乳化剤
• エモリエント剤

ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2の安全性情報

皮膚刺激性：非刺激性-わずかな刺激性が起こる可能性あり

Cosmetic Ingredient Review（2016）「Safety Assessment of Polyglyceryl Fatty Acid Esters as Used in Cosmetics」Final Report.

https://online.personalcarecouncil.org/ctfa-static/online/lists/cir-pdfs/FR717.pdf

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