表示名称成分詳細
カンフル
成分番号(JP number): 551023
- INCI
- CAMPHOR
- 定義(Description)
- 本品は、次の式で表されるケトンであり、クスノキCinnamomum camphoraの木部から得られるか、又は合成される。1,7,7-Trimethylbicyclo[2.2.1]-2-heptanone; Bornan-2-one
- 日本の規制情報(Japanese regulation information)
- 【化粧品に配合可能な医薬品の成分について】*dl-カンフルについて記載。<100g中の最大配合量(g)について> 粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流すもの: 4.0g,<100g中の最大配合量(g)について> 粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流さないもの: 4.0g,粘膜に使用されることがある化粧品: (1.0)g, 注1) 旧基準に収載されていた成分。注2) ( )内は、旧基準において示していた成分の分量を参考に付したもの。注3) 一部、用途の違いによりその整合性を図ったこと。
- 中文inci(CN/中国名称)
- 樟脑
- 中国の規制情報(Chinese regulation information)
- 【已使用化妆品原料目录(2021年版)】Maximum Historical Usage in Rinse-off Cosmetics(%): (none), Maximum Historical Usage in Leave-on Cosmetics(%): 11
- 韓国inci(KR/ハングル/성분명)
- 캠퍼
- CAS No.
- 464-49-3/76-22-2
- EC No.
- 207-355-2/200-945-0
- EUの規制情報(Restriction/Annex/Ref#)
原料情報
カンフル / CAMPHOR
カンフルとは
カンフルとは
カンフルは、クスノキ科植物クスノキに多量に含まれるテルペノイド化合物であり、モノテルペンに分類される分子量152.24の二環性モノテルペンケトンです(1)。
テルペノイドとは、種々の植物やまれに動物から得られる有機化合物のうち、炭素数が5の倍数であり、生合成的知見からはn個のイソプレンあるいはイソペンタンから構成される前駆物質に由来すると考えられる物質の総称をいいます。別名をテルペンとも言います。
カンフルは、日本では樟脳(しょうのう)とも呼ばれることもあり、楠の木片を水蒸気蒸留で抽出し結晶化させたものをいいます。
カンフルは独特な芳香を持つことから、医薬品・香料・セルロイドの原料など、古くから世界中で使われてきた歴史があります。
天然の防虫剤などは古くから使われてきたものの代表例です。この理由として、カンフルの有する物質が気体になりやすい性質の揮発性を持っているためです。
カンフルを含んだ防虫剤は、衣装ケースなどから出したときには香りがしっかりとしますが、空気や天日にさらせば香りはなくなる効果があります。
カンフルには、化学物質などが含まれていませんので、敏感な体質の人にもやさしい天然の防虫剤と言われています。
また消臭やアロマ効果、除菌やウイルス予防などにも利用されており、その独特な芳香を利用した製品が多いです(2)。
さらに医薬品分野においては、消炎薬として湿布剤や、塗り薬などに使用されています。また止痒作用があることからかゆみ止めなどに使用されており、カンフルの使用用途は多岐に渡ります(3)(4)。
カンフルの効果
カンフルには、皮膚に浸透してクスノキ特有のスーッとする清涼感を付与する効果を有していることが報告されています。(文献4:2012;文献5:2015)
この効果を持つことから、一般的に同様の効果をもつメントールと併用して用いられることが多く、主に使用される製品としては、スキンケア化粧品、ボディケア製品、シャンプー製品、頭皮ケア製品、洗顔料、リップケア製品などが挙げられます(4)(5)。
またカンフルには、可塑性という効果があります。この可塑性とは、粘土のように自由自在に形を整えることのできる物性のことです。
この効果を持つことから、ニトロセルロースや樹脂など被膜形成剤に対して、適度な柔軟性と弾力を付与する目的でカンフルは使用されています。主な製品としてはネイル製品などが挙げられます(6)(7)。
参考文献
(1) 大木 道則, 他(1994)「d-ショウノウ」化学辞典,680.
(2) https://shiseihanbai.biz/contents/materials-camphor#i 「しせいノート, カンフル(天然樟脳)とは?」
(3) 池田 剛(2017)「モノテルペン」エッセンシャル天然薬物化学 第2版,120-124.
(4) 鈴木 一成(2012)「カンフル」化粧品成分用語事典2012,403.
(5) 宇山 侊男, 他(2015)「カンフル」化粧品成分ガイド 第6版,112.
(6) 柴谷 順一, 他(1990)「最近の化粧品用樹脂の動向」色材協会誌(63)(4),217-225.
(7) 大枝 一郎(2001)「メイクアップ化粧品の最近の動向」色材協会誌(74)(10),518-525.
カンフルの配合目的
- 清涼感の付与
- 可塑
カンフルの安全性情報
カンフルは医薬品成分であることから化粧品および医薬部外品への配合上限が定められており、また試験データをみるかぎり、3%濃度において皮膚刺激なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。
眼刺激性について
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。
皮膚感作性(アレルギー性)について
日本薬局方および医薬部外品原料規格2021に収載されており、50年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。
日本語論文
西脇 純子 ファルマシア 52(1), 54-55, 2016 J-STAGE 医中誌Web
賛成 日本経済を大改革するカンフル剤 (交渉参加は毒かクスリか TPPは私たちの暮らしをどう変える?)町田 徹婦人公論 97(3), 142-144, 2012-01-22
[カンフル剤のQE2が奏功 好業績企業は設備投資、M&Aへ (「失われた5年]で済む 米国復活)](https://ci.nii.ac.jp/naid/40018267320)
尾村 洋介 エコノミスト 89(11), 24-27, 2011-03-01
英語論文
Skin disposition of d-camphor and l-menthol alone and together.
Cal K. Methods Find Exp Clin Pharmacol. 2009. PMID: 19557201
Camphor induces cold and warm sensations with increases in skinand muscle blood flow in human.
Kotaka T, et al. Biol Pharm Bull. 2014.PMID: 25451841 Free article.
Effect of cineole, alpha-pinene, and camphor on survivability of skinflaps.
İnce B, et al. Turk J Med Sci. 2018.PMID: 29916225
Tran TA, et al. Phytother Res. 2015.PMID: 26458283
Yano T, et al. J Pharmacobiodyn. 1991.PMID: 1812275
Enhanced skin permeation of glabridin using eutectic mixture-based nanoemulsion.
Liu C, et al. Drug Deliv Transl Res. 2017.PMID: 28188607
Seto Y, et al. Regul Toxicol Pharmacol. 2020.PMID: 32088184
Scalia S, et al. J Pharm Pharmacol. 2007.PMID: 18053323 Clinical Trial.
Impaired thermosensation in mice lacking TRPV3, a heat and camphorsensor in the skin.
Moqrich A, et al. Science. 2005.PMID: 15746429
Prevention of ultraviolet-induced skin pigmentation.
Moyal D. Photodermatol Photoimmunol Photomed. 2004. PMID: 15379874
Ex vivo skin absorption of terpenes from Vicks VapoRub ointment.
Cal K, et al. Med Sci Monit. 2008.PMID: 18668006
Fleischli FD, et al. Chimia (Aarau). 2015.PMID: 26507219
Kohut I, et al. Pol Merkur Lekarski. 2020.PMID: 32352935
Gannu R, et al. PDA J Pharm Sci Technol. 2008. PMID: 19174954
Mekonnen A, et al. J Toxicol. 2019.PMID: 30833968
Spontaneous comedones on the skin of hairless descendants of Mexican hairless dogs.
Kimura T, et al. Exp Anim. 1996.PMID: 8902502