表示名称成分詳細
カラギーナン
成分番号(JP number): 550995
- INCI
- CHONDRUS CRISPUS CARRAGEENAN
- 定義(Description)
- 本品は、紅藻類 Rhodophyceae の主としてスギノリ科 Gigartinaceae 及びミリン科 Solieriaceae から得た炭水化物である。
- 日本の規制情報(Japanese regulation information)
- 中文inci(CN/中国名称)
- -
- 中国の規制情報(Chinese regulation information)
- -
- 韓国inci(KR/ハングル/성분명)
- CAS No.
- -
- EC No.
- -
- EUの規制情報(Restriction/Annex/Ref#)
-
原料情報
カラギーナン / CHONDRUS CRISPUS CARRAGEENAN
カラギーナンとは
カラギーナンは、硫酸基を持つD-ガラクトースによる繰り返し構造を持つカラゲニンを含んでいる海藻系水溶性高分子です。
カラギーナンは化粧品成分表示名称、医薬部外品表示名称であり、一般的にはカラギーナン、アイリッシュモスエキスと呼ばれることもあります。
カラギーナンの原料となる海藻は、紅藻類（学名：Rhodophyta 英名：red algae）のスギノリ科（学名：Gigartinaceae）、ミリン科（学名：Solieriaceae）から得られる海藻抽出物です。
カラゲニンとは、ガラクトースから構成される多糖の総称であるガラクタンに硫酸基が結合した高分子です(1)(2)。
ガラクタンは自然界では海藻類だけでなく、その他の植物にも広く分布しており、他の糖とヘテロ結合をした状態で存在していることが多くなっています。
カラゲニンは硫酸基とアンヒドロ-D-ガラクトースの有無により3タイプに分類されており、κ-カラギーナン、λ-カラギーナン、ι-カラギーナンと呼ばれ、性質も異なります。
また、自然界においてはκ-カラギーナンを単独で含むというわけではなく、それぞれの植物や製法によっても割合が異なっています(3)。
カラギーナンは食品添加物、医薬品添加物としても広く使用されています。
化粧成分としては親水性増粘剤として使用され、感触改良、安定性、保湿作用を目的に配合されます。
化粧品としてはスキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、化粧下地製品、マスク製品、洗顔料、洗顔石鹸、ボディソープ製品、ボディ石鹸、クレンジング製品、ヘアスタイリング製品として使用されたりしています。
3つのカラギーナン、それぞれの性質の違いについて、下記にまとめます(3)。
κ-カラギーナン
溶解性：加熱溶解
ゲル形成：冷却、カリウムイオン
ゲル性状：金属イオンによりもろいゲルを精製しますが、一方ローカストビーンガムなどのガラクトマンナンとの併用により、弾力性のあるゲルを精製します。
ゲルの離水：金属イオンによるゲルは離水が多く、ガラクトマンナンなどの併用によるゲルは離水が少ないです。
ι-カラギーナン
溶解性：加熱溶解
ゲル形成：カルシウムイオン
ゲル性状：金属イオンより弾力性があるゲルです。
ゲル離水：少ない
λ-カラギーナン
溶解性：冷水可溶
ゲル化はしません。
離水とは、ゲルの固形成分と、液体成分が分離する減少です。
離水により、テクスチャー等が変化してしまいます。
離水しやすいということは、化粧品の安定性が低下してしまい、化粧品成分としては使用しづらい成分です。
ここからは、カラギーナンの特徴を解説します。
増粘
カラギーナンの増粘は独特の粘性とテクスチャーを持っています。
増粘効果により、乳液や懸濁液の安定性、感触改良作用も期待できます(4)。
3種類のカラギーナンの中では、単独の増粘作用であれば、ι-カラギーナン、λ-カラギーナンが使用されます。
κ-カラギーナンに関して、ローカストビーンガムやグルコマンナンなどとの併用によるゲル化により、弾力性のあり離水の少ないゲルを形成します。化粧成分としても併用されることが多くなっています(4)。
保湿効果
カラギーナンは水を抱え込む力もつよく、肌にしなやかなハリ感を与えてくれる働きもあります(4)。
安全性
カラギーナンは40年以上の使用実績があり、食品添加物など様々な指定を受けています。
下記指定されているリストです。
- 食品添加物指定添加物リスト
- 医薬品添加物規格
- 医薬部外品原料規格
使用実績の期間から、一般的な使用であれば安全性は高いとされています。
皮膚刺激性に関しては、検証結果等のデータはありませんが、40年という使用実績から一般的な使用での使用では問題ないと考えられます。
眼科刺激性に関しては、実証実験で最小限の眼科刺激が報告されています(5)。
皮膚感作性に関しては、実験の結果からほとんどアレルギーはないと言われています(5)。
参考文献
(1) 森北出版「カラゲニン」化学辞典（第2版）
(2) 森北出版「ガラクタン」化学辞典（第2版）
(3) 多糖類.com「ガラギナン」〈https://www.tatourui.com/about/type/06_carrageenan.html 2021年11月27日アクセス〉
(4) 化粧品成分ガイド 第7版. (2000). (n.p.): フレグランスジャーナル社.p205
(5) W.F. Bergfeld, et al（2015）「Safety Assessment of Polysaccharide Gums as Used in Cosmetics」〈https://online.personalcarecouncil.org/jsp/CIRList.jsp?id=6900 2021年11月27日アクセス〉
カラギーナンの配合目的
- 増粘性による、化粧品の感触改良、乳化安定性、懸濁液安定作用
- グルコマンナンとの併用による弾力性のあるゲル精製と離水性の制御作用
- 増粘作用、ゲル化、吸水作用による保湿効果
カラギーナンの安全性情報
https://online.personalcarecouncil.org/ctfa-static/online/lists/cir-pdfs/FR680r.pdf
日本語論文
暖海土佐湾における熱帯性紅藻キリンサイのGreen typeとBrown typeの生長速度
矢野 誠 , 筒井 功 , 大野 正夫 Bulletin of marine sciences and fisheries, Kochi University (25), 59-62, 2007-03
田中 廣通 日本化粧品技術者会誌 32(2), 124-130, 1998
大原 武 , 斎藤 寛 , 幾田 信生 日本化粧品技術者会誌 29(4), 329-335, 1996
ゼリー中に含まれていた増粘剤カラギーナンによるアナフィラキシーの1例 : 今後留意すべき増粘剤アレルギー (特集 蕁麻疹・痒疹)
原田 晋 , 田中 功 , 千貫 祐子 , 荻田 誠司 皮膚科の臨床 61(13), 1950-1954, 2019-12
英語論文
Carrageenan: a natural seaweed polysaccharide and its applications.
Prajapati VD, Maheriya PM, Jani GK, Solanki HK.Carbohydr Polym. 2014 May 25;105:97-112. doi: 10.1016/j.carbpol.2014.01.067. Epub 2014 Jan 30.PMID: 24708958 Retracted. Review.
Carrageenan: Drug Delivery Systems and Other Biomedical Applications.
Pacheco-Quito EM, Ruiz-Caro R, Veiga MD.Mar Drugs. 2020 Nov 23;18(11):583. doi: 10.3390/md18110583.
Carrageenan hydrogel as a scaffold for skin-derived multipotent stromal cells delivery.
Rode MP, Batti Angulski AB, Gomes FA, da Silva MM, Jeremias TDS, de Carvalho RG, Iucif Vieira DG, Oliveira LFC, Fernandes Maia L, Trentin AG, Hayashi L, de Miranda KR, de Aguiar AK, Rosa RD, Calloni GW.J Biomater Appl. 2018 Sep;33(3):422-434. doi: 10.1177/0885328218795569.PMID: 30223731
Kim SM, Kim TK, Ku SK, Kim MJ, Jung S, Yong HI, Choi YS.J Anim Sci Technol. 2020 Jul;62(4):553-564. doi: 10.5187/jast.2020.62.4.553. Epub 2020 Jul 31.PMID: 32803187 Free PMC article.
Iwasaki T, Watarai S.J Vet Med Sci. 2020 Dec 5;82(11):1639-1642. doi: 10.1292/jvms.20-0086. Epub 2020 Sep 17.PMID: 32938835 Free PMC article.
Influence of carrageenan on the rheology and skin permeation of microemulsion formulations.
Valenta C, Schultz K.J Control Release. 2004 Mar 5;95(2):257-65. doi: 10.1016/j.jconrel.2003.11.020.PMID: 14980774
Rheological studies of polysaccharides for skin scaffolds.
Almeida N, Mueller A, Hirschi S, Rakesh L.J Biomed Mater Res A. 2014 May;102(5):1510-7. doi: 10.1002/jbm.a.34805. Epub 2013 Jun 25.PMID: 23703897
Hajhashemi V, Safaei S.Adv Biomed Res. 2021 Jul 29;10:18. doi: 10.4103/abr.abr_222_20. eCollection 2021.PMID: 34476226 Free PMC article.
Xu M, Cai H, Liu Z, Chen F, Wang Y, Dai F, Li Z.Int J Biol Macromol. 2022 Jan 1;194:755-762. doi: 10.1016/j.ijbiomac.2021.11.122. Epub 2021 Nov 25.PMID: 34838861
Jahan N, Minuti A, Trevisi E.Vet Immunol Immunopathol. 2015 Jun 15;165(3-4):119-26. doi: 10.1016/j.vetimm.2015.04.003. Epub 2015 Apr 11.PMID: 25912553
Kaur R, Sharma A, Puri V, Singh I.Bioimpacts. 2019;9(1):37-43. doi: 10.15171/bi.2019.05. Epub 2018 Oct 7.PMID: 30788258 Free PMC article.
Elkomy MH, El Menshawe SF, Eid HM, Ali AM.Drug Dev Ind Pharm. 2017 Apr;43(4):531-544. doi: 10.1080/03639045.2016.1268153. Epub 2016 Dec 20.PMID: 27910712
Chitosan-glycolic acid: a possible matrix for progesterone delivery into skin.
Kählig H, Hasanovic A, Biruss B, Höller S, Grim J, Valenta C.Drug Dev Ind Pharm. 2009 Aug;35(8):997-1002. doi: 10.1080/03639040902755189.PMID: 19365777
Rodt SA, Reed RK.Int J Microcirc Clin Exp. 1993 Jun;12(3):299-312.PMID: 8375964
Anaphylaxis to carrageenan: a pseudo-latex allergy.
Tarlo SM, Dolovich J, Listgarten C.J Allergy Clin Immunol. 1995 May;95(5 Pt 1):933-6. doi: 10.1016/s0091-6749(95)70091-9.PMID: 7751512
Lomash V, Parihar SK, Jain NK, Katiyar AK.Cell Mol Biol (Noisy-le-grand). 2010 Feb 9;56 Suppl:OL1239-51.PMID: 20158977
Şenyiğit T, Sonvico F, Rossi A, Tekmen I, Santi P, Colombo P, Nicoli S, Özer Ö.Int J Mol Sci. 2016 Dec 26;18(1):32. doi: 10.3390/ijms18010032.PMID: 28035957 Free PMC article.
Yokota J, Kyotani S.J Chin Med Assoc. 2018 Jun;81(6):511-519. doi: 10.1016/j.jcma.2018.01.008. Epub 2018 Mar 17.PMID: 29555445
Sun X, Ye L, Liang H.Soft Matter. 2021 Nov 3;17(42):9708-9715. doi: 10.1039/d1sm01135a.PMID: 34642718
Sikandar S, Gustavsson Y, Marino MJ, Dickenson AH, Yaksh TL, Sorkin LS, Ramachandran R.Eur J Neurosci. 2016 Jul;44(1):1714-22. doi: 10.1111/ejn.13261. Epub 2016 May 19.PMID: 27108664 Free PMC article.
