カカオ脂とは

カカオ脂は、化学構造にグリセリンと高級脂肪酸とのトリグリセリドを主成分とする、植物性油脂です。

化粧品成分としては、油性成分としてベース成分、またエモリエント作用を目的に使用されます。

原料となる植物は、中東南米熱帯原産でアオギリ科カカオ（学名：Theobroma cacao 英名：Cacao）の木の果実（種子）です(1)。

チョコレートやココアの原料として知られており、カカオの種子から抽出されたものが、カカオ脂と呼ばれます。

医薬品において、カカオ脂は天然成分の油性基材として、座薬などに使用されていました(2)。

その他、歯科治療では口内炎用軟膏の基材、湿潤剤等にも使用されています(1)。

カカオ脂は化粧品成分表示名称、医薬部外品表示名称に定められており、慣用名としてはココアバター、カカオバターと呼ばれています。

植物油は植物の種類、産地、部位、圧搾方法等により成分が変化するといわれています。

ですが、主要な脂肪酸成分と割合は分かってきています。

パルミチン酸：約23-35%、ステアリン酸：31-34.5%、オレイン酸：約39-43%

ヨウ素価：32.8-41.7

カカオ脂の主要な脂肪酸は、飽和脂肪酸と二不飽和脂肪酸であるオレイン酸の割合が多くなっています。脂肪酸の組成から酸化安定はとても高いといえます(3)。

ヨウ素価から「不乾性油」に分類されます。

状態としては、カカオ「脂」と名前で表せる通り、固形の状態が多いということを表しています。

融点は32-43℃と体温に近く、常温で固形状態ですが、製品として使用時に体温で融解し、しっとりとしたテクスチャーを持つことが特徴です。

化粧製品としてはボディ&ハンドケア製品、リップ製品、メイクアップ化粧品などに使用されます。

エモリエント作用

カカオ脂としてのエモリエント作用は、体温と融点が近く、人肌で溶けて展延性がよく、肌表面のコーティング・光沢を出すのが特徴と言えます。

展延性を活かして皮膚表面へ広がることで角質層を閉塞させ、角質層からの水分蒸発を抑制します。

水分蒸発を抑制することで、角質層の潤いを維持し、肌の柔軟性、光沢、柔らかさを与えてくれます。

ベース成分

化粧品のベース成分としては水性成分、油性成分、界面活性剤、顔料・粉体成分のうち、油性成分として使用され、角質層からの水分蒸発抑制作用であるエモリエント作用を目的に使用されます。

その他

カカオ脂は脂肪酸以外の成分としてポリフェノール、テオブロミンを配合しています。

ポリフェノール、テオブロミンによる活性酸素の除去等による、抗炎症・抗酸化作用の研究も進んできており、注目されています(5)。

安全性

カカオ脂は10年以上の使用実績があり、日本薬局方、医薬部外品原料規格に記載されています。

一般的な使用であれば安全性は高いといわれています。

皮膚刺激性に関してほとんど刺激がないとの結果や、皮膚感作性に関してもアレルギーはないとの実験結果が報告されています(4)。

眼刺激性に関しては、詳細な調査を行った実験データは見当たりません。

参考文献

(1)歯と香り : 歯科診療をとりまく香り. (2008). (n.p.): フレグランスジャーナル社.p112

(2)調剤指針. (2008). 日本: 薬事日報社.p196

(3)中西 喜次, カカオ脂とカカオ代用脂, 油化学, 1970, 19 巻, 8 号, p. 722-733

(4) Cosmetic Ingredient Review（2017）「Safety Assessment of Plant-Derived Fatty Acid Oils」International Journal of Toxicology(36)(3),51S-129S.

(5) Scapagnini, G.; Davinelli, S.; Di Renzo, L.; De Lorenzo, A.; Olarte, H.H.; Micali, G.; Cicero, A.F.; Gonzalez, S. Cocoa Bioactive Compounds: Significance and Potential for the Maintenance of Skin Health. Nutrients 2014, 6, 3202-3213.

カカオ脂の配合目的

• 角質層からの水分蒸発抑制作用（エモリエント作用）
• 角質層の水分増加による、皮膚の柔軟性の改善作用

カカオ脂の安全性情報

• Final Report
• Published Report

1,3-ジオレオイル-2-ステアロイルグリセリン(OSO)/カカオ脂等量混合系, 及びOSO含有チョコレートの物理的性質

古谷野 哲夫 , 蜂屋 厳 , 佐藤 清隆

油化学 42(3), 184-189, 1993-03-20

加工油脂のコレステロール代謝に及ぼす影響 (第3報):パーム油と硬化大豆油及びカカオ脂との影響の比較

村上 千秋 [他] , 知見 憲次 , 兼松 弘 , 新谷 〓 , 志村 光雄 , 水谷 治夫 , 平井 長一郎

油化学 40(9), 719-724, 1991

動植物油脂の劣化に関する理化学的研究-5-一定加熱温度下での加熱時間と通気量の変化に伴うカカオ脂の理化学的性状の変動

鈴木 和威 , 増田 哲也

日本大学農獣医学部学術研究報告 (46), p196-209, 1989-03

カカオ脂の誘電特性　ＩＩ

塩見 成子

生活衛生 33(2), 79-82, 1989

カカオ脂の誘電特性

塩見 成子

生活衛生 32(4), 171-174, 1988

カカオ脂の結晶化挙動

蜂屋 巌 , 古谷野 哲夫 , 佐藤 清隆

油化学 37(6), 431-436, 1988

カカオ脂及びチョコレートの結晶化過程と粘度変化

蜂屋 巌 , 古谷野 哲夫 , 佐藤 清隆

油化学 37(8), 613-617, 1988

カカオ脂 (植物油脂のステロ-ル組成)

油化学 30(11), p797-798, 1981-11

ガスクロデータ:カカオ脂及びシア脂の脂肪酸組成

油脂及び油脂製品試験法部会・ガスクロデータ小委員会油化学 27(7), 473-473, 1978

カカオ脂とカカオ代用脂

中西 喜次

油化学 19(8), 722-733, 1970

カカオ脂融点測定法

島谷 末吉 [他] , 岩崎 千代子

油化学 11(7), 357-364, 1962

カカオ脂類似脂肪の製造研究-2・3-

立石 悌三郎 [他]

油化学 10(11), ????, 1961-11

カカオ脂類似脂肪の製造研究 (第4報):パーム油よりの製造とその性状について

立石 悌三郎 [他] , 藤原 正雄 , 村瀬 幸市

油化学 10(12), 717-720, 1961

カカオ脂類似脂肪の製造研究 (第3報):パーム核分別脂によるチョコレートの製造およびその性状について

立石 悌三郎 , 藤原 正雄 , 中山 貞雄

油化学 10(11), 666-670, 1961

カカオ脂類似脂肪の製造研究 (第2報):パーム核分別脂の性状について

立石 悌三郎 , 藤原 正雄 , 村瀬 幸市

油化学 10(11), 662-666, 1961

カカオ脂類似脂肪の製造研究 (第1報):パーム核油の溶剤分別結晶法による製造

立石 悌三郎 [他] , 高槻 隆男 , 藤原 正雄

油化学 10(10), 592-596, 1961

カカオ脂の融点について

中西 喜次 [他] , 塩見 成子

油化学 9(7), 370-376, 1960

カカオ脂代用品の製造

小野 二荒 [他]

名古屋産業科学研究所研究報告 (9), ????, 1956-12

坐藥基礎劑としてのカカオ脂代用トリラウリンに就て

刈米 達夫 , 水谷 三郎

藥學雜誌 59(8), 570-571, 1939

藥用カカオ脂代用品としてのヤブニクケイ脂に就て

刈米 達夫 , 岩尾 裕之

藥學雜誌 58(3), 238-240, 1938

Evaluating lubricant performance to reduce COVID-19 PPE-related skin injury.

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Effects of Formulation Excipients on Skin Barrier Function in Creams Used in Pediatric Care.

Kovács A, et al. Pharmaceutics. 2020. PMID: 32759663 Free PMC article.

Cocoa polyphenols and their influence on parameters involved in ex vivo skin restructuring.

Gasser P, et al. Int J Cosmet Sci. 2008. PMID: 18822039

Estrogenic and anti-estrogenic activity of off-the-shelf hair and skin care products.

Myers SL, et al. J Expo Sci Environ Epidemiol. 2015. PMID: 24849798 Free PMC article.

Slow release anti-fungal skin formulations based on citric acid intercalated layered double hydroxides nanohybrids.

Perera J, et al. Chem Cent J. 2015. PMID: 26023319 Free PMC article.

Effect of different dietary fats on daily loss of sterols from the skin of man.

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