表示名称成分詳細
オレイン酸
成分番号(JP number): 550865
- INCI
- OLEIC ACID
- 定義(Description)
- 本品は、次の化学式で表される不飽和脂肪酸である。9-Octadecenoic acid (9Z)-
- 日本の規制情報(Japanese regulation information)
- 中文inci(CN/中国名称)
- 油酸
- 中国の規制情報(Chinese regulation information)
- 【已使用化妆品原料目录(2021年版)】Maximum Historical Usage in Rinse-off Cosmetics(%): 45.5, Maximum Historical Usage in Leave-on Cosmetics(%): 1
- 韓国inci(KR/ハングル/성분명)
- 올레익애씨드
- CAS No.
- 112-80-1
- EC No.
- 204-007-1
- EUの規制情報(Restriction/Annex/Ref#)
-
原料情報
オレイン酸 / OLEIC ACID
オレイン酸とは
オレイン酸は、炭素数18で二重結合を1つ持つ、不飽和脂肪酸であり長鎖脂肪酸の一種です。
化粧品成分表示名称、医薬部外品表示名称ともにオレイン酸と定められています。
オレイン酸は植物油に多く含まれ、オリーブ油、ツバキ油などに多く含まれています。
植物油から分離され、植物油を加水分解したのちに蒸留精製して得られる、無色~淡黄色の透明な液体です(2)。
長鎖脂肪酸とは炭素数が11-20の間の脂肪酸を呼び、また炭素数が12以上の脂肪酸においては、とくに高級脂肪酸と呼ばれます。
脂肪酸においては、二重結合の有無により、二重結合のない「飽和脂肪酸」、二重結合のある「不飽和脂肪酸」に分かれており、オレイン酸は1つの二重結合を含むことで不飽和脂肪酸と呼ばれます。
一般的に、不飽和脂肪酸は安定性が低く、常温での状態は液体、酸化安定性は低いと言われています。しかし、不飽和脂肪酸の中でも二重結合が1つと少ないことから、酸化安定性は高い脂肪酸と言われています(1)。常温で酸化した時には、着色、変敗臭を発生させます(2)。
サフラワー油、ヒマワリ種子油など不飽和脂肪酸が多く、酸化安定性が低い植物油に関して、近年の品種改良によりオレイン酸を多く含み、酸化安定性が高くなっている品種が誕生しています(3)。
オレイン酸の分子量、物性を示します(8)。
分子式:C18H34O2
簡略式:C18:1(n-9)
分子量:282.46
融点:16.3℃
化粧成分としてオレイン酸は界面活性剤として洗浄・起泡、乳化作用、抗菌作用を目的に使用されます。
化粧品としては、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、日焼け止め製品、洗顔料&洗顔石けん、ボディ&ハンドソープ製品など多くに製品に使用されています。
洗浄・起泡
オレイン酸は石けんの原料として使用され、オレイン酸の洗浄力は冷水でも洗浄力に優れた石けんを作ることができます。
オレイン酸を含む石けんの特徴は、石けんとしての仕上がりの堅さはあるものの、型崩れはしやすい、起泡力は比較的高く、泡の持続性があるということです。
脂肪酸の中では、他の脂肪酸との混合により、起泡力に相乗効果が起こることがわかってきています。
オレイン酸はパルミチン酸、ステアリン酸との等量混合において、起泡力に関して相乗効果が確認されています(4)(5)。
乳化
オレイン酸は自己乳化能という機能を持っており、O/W型エマルジョン(水中油型)を自動的に作る特性が知られています。自己乳化能を持つことから、乳化目的で使用されるだけでなく、乳化物の感触改良の目的にも使用される重要な成分です。
感触改良の具体的な変化としては、展延性の向上、質感としての硬さや流動性の変化が起こります。
皮膚吸着
乳化作用における感触改良による、展延性、質感等の改良だけでなく、オレイン酸は洗浄後の皮膚への吸着量が少ないことから、洗浄後の肌へ使用感の違いがわかっています(6)。
洗浄後の肌への吸着量が多いと、つっぱり感、カサつきが多くなると言われています。
オレイン酸は吸着量が少ないことで、洗浄後の肌のつっぱり感、カサつき程度が低いと言えます。
抗菌作用
オレイン酸によって、皮膚表面に存在する黄色ブドウ状球菌の増殖抑制作用が実験の結果によりわかっています。
この作用は、表皮表面において常在菌と呼ばれる、アクネ菌、表皮ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌のバランスが健康な皮膚の指標です。
黄色ブドウ球菌の増加はアトピー性皮膚炎に関係していることが近年わかってきています(7)。
安全性
オレイン酸は50年以上の実績があり、医薬品添加物規格、秘薬部外品原料規格に収載されています。
一般的な使用であれば安全性に関して問題ないと言われています。
皮膚刺激に関しては、洗浄しない・洗浄する場合の違いでは、軽度の刺激は共通しています。
しかし、洗浄をせずに累積することで、中程度の刺激に増強されることが報告されています(9)。
眼刺激に関して洗浄することで、痛み等の刺激は感じられませんでしたが、洗浄しないと軽度の刺激がでることがわかっています(9)。
皮膚感作・光感作においては、ほとんどアレルギーなどないことがわかっています(9)(10)。
参考文献
(1) オリーブ石けん、マルセイユ石けんを作る: 『お風呂の愉しみ』テキストブック. (2001). 日本: 飛鳥新社.p77
(2)化粧品成分用語事典2012. (2012). 日本: 中央書院.p38
(3) DAUN James K.「カナダ産油糧種子における脂肪酸組成の改良」日本油化学会誌.1341-8327.公益社団法人 日本油化学会(1998)(47)(3)233-238,290
(4) 難波 義郎, 林 静三郎, 淵澤 豊造, 洗浄力に寄与する要因の研究 (第1報), 油脂化学協会誌, 1955, 4 巻, 5 号, p. 238-244
(5) 林 静三郎, 淵沢 豊造, 難波 義郎, 洗浄力に寄与する要因の研究 (第 2 報), 油化学, 1957, 6 巻, 4 号, p. 208-213
(6)酒井 裕二(1999)「理想的な洗顏料の開発」日本化粧品技術者会誌(33)(2),109-118.
(7) 新井 武利, 他(1996)「脂肪酸, 精製ツバキ油およびオリーブ油の黄色ブドウ球菌に対する増殖抑制作用について」日本化学療法学会雑誌(44)(10),786-791.
(8) 資源天然物化学. (2017). 日本: 共立出版.p107
(9)Cosmetic Ingredient Review(1987)「Final Report on the Safety Assessment of Oleic Acid, Laurie Acid, Palmitic Acid, Myristic Acid, and Stearic Acid」International Journal of Toxicology(6)(3),321-401.
(10)Cosmetic Ingredient Review(2019)「Safety Assessment of Fatty Acids & Fatty Acid Salts as Used in Cosmetics」Final Report.
オレイン酸の配合目的
- 界面活性剤としての洗浄・起泡作用
- 界面活性剤としての乳化剤、乳化安定作用
- 黄色ブドウ状球菌の増殖抑制作用
オレイン酸の安全性情報
https://online.personalcarecouncil.org/ctfa-static/online/lists/cir-pdfs/FR777.pdf
日本語論文
モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン塗布のマウスに対する生体影響
中島 孝江 , 東 恵美子 大阪府立公衆衛生研究所 研究報告 51(0), 51-56, 2013
高純度オレイン酸を油剤としたサーファクタントフリーエマルション (特集 最近の化粧品処方技術の動向--乳化・可溶化・分散をめぐって)
酒井 俊郎 フレグランスジャーナル 37(11), 46-53, 2009-11
酒井 裕二 , 竹ノ内 正紀 , 阿部 正彦 色材協會誌 73(2), 47-52, 2000-02-20
新規の化粧品用エモリエント--高オレイン酸のヒマワリ油新品種 (特集 化粧品と油脂)
松本 宏一 油脂 50(6), 62-65, 1997-06
英語論文
Bioactive Compounds and Quality of Extra Virgin Olive Oil.
Jimenez-Lopez C, Carpena M, Lourenço-Lopes C, Gallardo-Gomez M, Lorenzo JM, Barba FJ, Prieto MA, Simal-Gandara J.Foods. 2020 Jul 28;9(8):1014. doi: 10.3390/foods9081014.PMID: 32731481 Free PMC article. Review.
Carta G, Murru E, Lisai S, Sirigu A, Piras A, Collu M, Batetta B, Gambelli L, Banni S.PLoS One. 2015 Mar 16;10(3):e0120424. doi: 10.1371/journal.pone.0120424. eCollection 2015.PMID: 25775474 Free PMC article.
Oteri M, Gresta F, Costale A, Lo Presti V, Meineri G, Chiofalo B.Antioxidants (Basel). 2021 May 30;10(6):876. doi: 10.3390/antiox10060876.PMID: 34070822 Free PMC article.
Mokhtar SM, Swailam HM, Embaby HE.Food Chem. 2018 May 15;248:1-7. doi: 10.1016/j.foodchem.2017.11.117. Epub 2017 Dec 2.PMID: 29329831
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